主な介護資格・研修の種類
介護に関わる資格・研修のなかで基本となるのが「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)」「介護福祉士実務者研修」「介護福祉士」の3つです。
■介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護に関わる知識・技術の基礎から応用までを学ぶ、介護の現場に入るうえでの入門資格。介護の現場で働くにあたっては、キャリアのスタートにぴったりな介護資格です。
介護の基本が学べるので、介護職員を目指す方だけでなく、将来的なご家族の介護に備えて、正しい知識を身に付けたい方にもおすすめです。
介護職員初任者研修資格の取得にはスクールに通い、修了試験に合格する必要があります。修了試験はスクールの授業内容を理解できていれば、誰でも合格できる内容です。
■介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護福祉士国家試験を受験するために修了が義務付けられたステップアップ資格です。また、修了後は訪問介護事業所でヘルパー業務のマネジメントを行うサービス提供責任者(サ責)としても活躍できます。
その内容は、社会保障制度、コミュニケーション技術、たん吸引や経管栄養をはじめとした医療的ケアなど、より質が高く実践的な介護を行うための知識・技術について。
介護福祉士実務者研修資格の取得にはスクールに通い、修了試験に合格する必要があります。こちらも介護職員初任者研修同様、スクールの授業内容をしっかり理解できていれば合格できる内容です。
■介護福祉士
介護福祉士は、介護の資格のなかで唯一の国家資格です。介護に関する専門的な知識を持っているという証であることと、訪問介護においては、事業所に介護福祉士が多くいると特定事業所加算もあるため、就職や転職での求人選考や、給料面でもメリットがあります。
介護福祉士国家試験の受験資格として、前述の「介護福祉士実務者研修」の修了と介護等の業務の実務経験が3年以上(従業期間 1,095日かつ従業日数 540日以上)必要です。
介護福祉士国家試験は年1回実施され、例年1月の最終日曜日に筆記試験、3月の第1日曜日に実技試験が行われています。また、受験には申込手続きが必要です。受験申込の期日は決まっていますので、受験予定の方はあらかじめ日程を確認しておきましょう。
介護福祉士国家試験の合格率は、過去傾向からみてみると例年70%前後。同じ介護資格のケアマネージャー試験の合格率が20%前後、社会福祉士の合格率が30%前後なので、介護福祉士国家試験は比較的高い合格率だといえます。
介護福祉士取得者のキャリアアップ資格・研修
介護福祉士は国家資格であるため、介護の現場では需要、将来性ともに高い資格です。さらにスキルアップ・キャリアアップしていくことで、ご自身の就業場所の利用者へ与える安心感はもとより、待遇や給料面も上げていけるメリットもあるでしょう。
■認定介護福祉士
認定介護福祉士は、介護施設や介護事業所、所属する介護福祉士や利用者のご家族への介護知識の習得やスキルアップを牽引し、他職種とも連携を図ることで地域包括ケアを推進する資格。民間資格ながら介護福祉士の上級資格、介護士系資格の中で最上位にあたり、管轄における介護サービス全体の質を向上させる役割を担います。
医療関係をはじめ多様な職種と関わり、高度で質の高い介護スキルやマネジメント力を身につけることができ、リーダーや管理職への昇進の可能性も高まるでしょう。
認定介護福祉士の受講資格は「介護福祉士資格取得後5年以上の実務経験」「介護職員を対象とした現任研修の100時間以上の研修歴」「研修実施団体の課すレポート課題または受講試験において一定の水準の成績を修めていること」が条件です。
全600時間の認定介護福祉士養成研修を修了し、認定申請書を提出。交付された認定証を認定機構に登録することによって、認定介護福祉士になることができます。
■喀痰吸引等研修
たんの吸引や経管栄養は、カテーテルやチューブを挿入して口腔内や鼻腔内、気管カニューレ内部のたん・唾液を排出したり、胃や十二指腸などへの栄養剤注入を行います。
こちらは医療行為に当たり、原則医療行為を禁止されている介護職員には行えませんが、喀痰吸引等研修を修了していればその一部を行うことができます。なお、介護福祉士実務者研修でたん吸引や経管栄養の知識は学びますが、実際に行為を行うには本研修の修了が必要です。
喀痰吸引等研修は、学歴や経験がなくても受講可能。喀痰吸引等研修を実施している「登録喀痰吸引等事業所」にて研修を受講し、発行される修了証を社会福祉振興・試験センターへ届け出ることで、たんの吸引や経管栄養の業務が行えるようになります。
■医療介護福祉士
医療介護福祉士は、医療チームのメンバーとして活躍できる医療知識を持つ介護福祉士の証となる資格です。介護福祉士として1年以上の実務経験があれば受講可能で、所定の講義と実習を修了し、認定試験に合格することで取得できます。
医療機関や介護施設において、高齢者をはじめ高度障害者や神経難病患者に対する介護ニーズが高まっており、一定の医学知識を持った介護福祉士のニーズも比例して高まっています。勤務先での緊急時の対応や事故防止をはじめ、介護福祉士としての仕事の幅をより広げ、職場での選択肢を増やすメリットのある資格です。
※2023年2月現在「医療介護福祉士」資格の講座は開講されておりません
■介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員(ケアマネージャー)は、介護を必要としている人の介護サービス計画(ケアプラン)作成や、介護サービス提供事業所や介護施設との橋渡しを担う資格。体力を求められる介護職のなかでは、業務において事務的な作業が多く、身体能力や体力の影響が少ないので、年齢を重ねても働きやすいのがメリットです。
勤務先または居住地の都道府県で年1回実施される「介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネジャー試験)」に合格し、実務研修を修了後に当該都道府県に登録することで資格取得できます。
介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネジャー試験)の受験資格は、介護福祉士や看護師、社会福祉士などの指定された業務において、従業期間5年以上かつ従事日数900日以上の実務経験を満たすこと。例年、受験申込期間が5月から7月頃、試験日が10月頃になっていますので、受験予定の方はあらかじめ日程を確認しておきましょう。
介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネジャー試験)の合格率は、各都道府県によって異なりますが概ね20%前後と、大変難易度の高い試験です。受験対策講座を用意しているスクールもあるので、自宅学習と併用して受講するのもよいでしょう。
■サービス提供責任者(サ責)
サービス提供責任者(サ責)は、訪問介護事業所において、介護支援専門員(ケアマネージャー)が作成する介護サービス計画に沿った訪問介護計画書の作成と、利用者に提供されるケアの目的や内容が、訪問介護員(ヘルパー)ごとに違ったものにならないよう指示・共有・調整を図るお仕事です。また、サービス提供責任者(サ責)は、資格ではなく役職名になります。
サービス提供責任者(サ責)になるには「介護福祉士資格」「介護福祉士実務者研修の修了」「旧ホームヘルパー1級課程の修了」のいずれかが必要です。
サービス提供責任者(サ責)「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、サービス提供責任者(サ責)の平均給与は327,020円。一般的な訪問介護事業所職員が296,770円なので、3万円ほど平均給与が高くなるメリットがあげられます。
ここまで、介護現場で特に求められる介護福祉士資格取得後のスキルアップ・キャリアアップ資格を紹介しました。ここからは介護の現場で働く方が、より質の高い介護サービスを提供するために役立つ資格を紹介します。
認知症ケアに関する資格・研修と種類
厚生労働省の調査によると、認知症高齢者は2025年に約700万人、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると予想されています。
認知症の知識やケアについては、介護の現場においても無視できないものですので、資格取得・研修受講によって、認知症への理解を深め、ケアを実践していくことが必要です。
■認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修は、認知症の方の介護を行う介護職員が、認知症への理解を深め、必要な基礎知識・技術を学ぶ研修です。2024年4月からは無資格の介護職員に対して受講が完全義務化され、現在経過措置期間(2021年4月~2024年3月まで)です。
受講方法は主催する自治体によって異なりますが、eラーニングを採用している自治体が多いようです。
■認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修は、認知症の方への介護についてより深く体系的に学ぶ研修です。「グループホーム」に勤務している介護職員の方には、より実践的で役に立つ研修でしょう。
受講方法や受講資格は主催する自治体によって異なりますが、東京都の場合「東京都内の介護保険施設・事業所(居宅介護支援事業所を除く)に従事していること」に加えて「認知症の方の介護に関する経験が2年程度以上」を満たす方が受講できます。
■認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践リーダー研修は、介護施設や介護事業所のリーダーとして、後輩や他の介護職員の指導をしたり、認知症ケアチームの取りまとめや調整など、認知症支援の推進役としてサービスの質を高める方法を学びます。
基礎研修・実践者研修の上位資格で、その名の通りリーダーを育成する研修になりますので、これから指導者としてキャリアアップしていきたい方におすすめの研修です。
受講方法や受講資格は主催する自治体によって異なりますが、「介護業務での5年以上の実務経験」「認知症実践者研修を修了し1年以上経過していること」を満たす方が受講できます。
■認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、日本認知症ケア学会認定の資格。認知症介護を行う方の継続的な認知症知識・技術の向上から、認知症の方とそのご家族に対して質の高いサービスの提供を目的としています。こちらは更新制の資格で、前回資格を更新してから5年以内に所定の単位取得が必要です。
認知症ケア専門士認定試験の受験資格には、試験実施年の3月31日から過去10年間に、3年以上認知症ケアの実務経験が必要です。認定試験は毎年1回で、一次試験はWEBでの筆記試験、二次試験は論述試験と倫理研修の受講になります。
認知症ケア専門士認定試験の合格率は、例年傾向では50%前後。決して簡単ではない資格試験ですので、自宅学習とあわせて日本認知症ケア学会主催の受験対策講座の受講がおすすめです。
■認知症ケア上級専門士
認証ケア上級専門士は、前述の認証ケア専門士の上級資格です。認知症ケアチームのリーダーや地域におけるアドバイザーとして、認知症ケアの方法を経験や科学的根拠に基づいた説明ができることが求められます。
また、指導者として後輩や認知症ケア専門士のケアに関する悩みや問題解決の支援を行いますので、認知症ケアでスキルアップ・キャリアップしていきたい方にはおすすめです。
認証ケア上級専門士認定試験は毎年1回行われ、以下の4点が受験資格になります。
1.認知症ケア専門士としての経験が3年以上あること
2.専門士資格更新の有無にかかわらず,2017年4月1日~2022年3月31日までに認知症ケア専門士の単位を30単位以上取得していること
3.認知症ケア上級専門士研修会を修了していること
4.次のいずれか1つ以上の条件を満たしていること*
認知症ケア上級専門士制度規則にある学術集会,地域部会研修会等での演題発表ならびに事例報告(筆頭者のみ)
認知症ケア上級専門士制度規則にある,査読制度のある機関誌等での論文・事例発表(筆頭者のみ)
* 2017年4月1日以降かつ専門士資格取得以降~受験申請期間最終日までに行った発表等に限ります.
認証ケア上級専門士認定試験の合格率は公表されていませんが、第14回(2022年度)の合格者は17名でした。
その他介護の現場を支える資格
■ケアクラーク
ケアクラークは介護事務の資格の1つで、介護事務に必要な基本知識と介護給付費請求書作成(レセプト業務)の能力を保有している証になります。
一般財団法人 日本医療教育財団が主催する「ケアクラーク技能認定試験」に合格することで取得できます。受験資格はないので誰でも受験でき、合格率は約70%と比較的難易度が低い資格です。
■介護予防運動指導員養成講座
介護予防運動指導員は、介護予防のプログラムを作り、運動指導を行う資格で「介護予防運動指導員養成講座」を受講することで取得可能です。
介護予防運動指導員養成講座は、以下の方に受講資格があります。
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、歯科衛生士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、介護支援専門員、健康運動指導士等、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員2級以上で実務経験2年以上の方、実務者研修修了者、初任者研修修了者で実務経験2年以上の方、および上記国家資格の養成校等の卒業見込みかつ資格取得見込み者(国家試験受験者)
■レクリエーション介護士
レクリエーション介護士は、高齢者向けのレクリエーションの専門知識を学び、レクリエーションプログラムの企画・計画が行える資格です。
2級はスクールでの通信講座・通学講座を受講することで、1級は必須講座の受講と筆記・実技の試験とあわせて3施設での実技研修を経て資格取得できます。
■ガイドヘルパー(移動介護従事者)
ガイドヘルパー(移動介護従事者)は、高齢者に限らず、視覚障がいや行動障がいを持たれている方など、一人で出掛けるのが困難な方に付き添い移動をサポートするお仕事です。
ガイドヘルパーの資格には、「同行援護従業者養成研修(視覚障がい者ガイドヘルパー)」「全身性障がい者ガイドヘルパー養成研修(全身性障がい者ガイドヘルパー)」「行動援護従業者養成研修(知的障がい者・精神障がい者ガイドヘルパー)」の3つがあり、利用者にどのような障がいがあるかによって必要な支援が異なります。
■福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は、福祉用具の適切な選び方、使用方法などの知識を身につけ、利用者の方やその家族の生活の質を向上させるサポートをするお仕事です。
福祉用具専門相談員の資格は、「福祉用具専門相談員指定講習」を受講し、修了試験に合格することで取得できます。受験資格はありませんので、誰でも受験可能です。
■福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターは、医療・福祉・建築についての幅広い知識を身につけ、各種の専門職と連携をとりながら適切な住宅改修プランを提示。高齢者や障がい者に対して住みやすい住環境を提案するお仕事です。
福祉住環境コーディネーターの資格は、東京商工会議所が主催する「福祉住環境コーディネーター検定試験」に合格することで取得できます。2021年度試験での合格率は、1級で17.7%、2級で67.8%、3級で66.1%という結果でした。
■重度訪問介護従業者
重度訪問介護従業者は、重度障がいで介護を必要としている方への介護知識や、専門的なケア技術を行う資格。各自治体の指定する「重度訪問介護従業者養成研修」を修了することで資格を取得できます。
■難病患者等ホームヘルパー
難病患者等ホームヘルパーは、特定疾患や難病を抱える方に対して、訪問型の介護・生活援助を行うお仕事です。
難病患者等ホームヘルパーの資格は、各自治体が指定する事業者で行われる「難病患者等ホームヘルパー養成研修」を修了することで取得できます。なお、研修には「入門講座」「基礎課程Ⅰ」「基礎課程Ⅱ」の3つがあり、それぞれで受講資格が異なります。
安心感のある質の高いサービス提供のために
超高齢化社会を目前にした現在。介護のニーズが増えていくなか、介護業界にこれからチャレンジする方、介護業界でスキルアップ・キャリアップを目指す方に向けて、求人や給料など処遇改善の側面に触れ、介護現場で役立つ資格・研修の種類を紹介しました。
実務経験が必要な資格・研修も多く、勤務しながら資格取得の学習をすすめなければいけないことも。介護施設や事業所の資格取得支援制度を活用したり、スクールを利用したりと、効率的な学習を行うのがおすすめです。
なお、現場で長く安定して働くうえで処遇は重要な要素ではありますが、ご自身の働く介護施設・介護事業所を利用される方に、安心感のある質の高いサービスを提供し続けることが資格取得の本質であることは、忘れてはいけません。
ご自身のために、サービス利用者とそのご家族のために、資格取得・研修受講にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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