移動困難者を支えるガイドヘルパーになるには?

移動困難者を支えるガイドヘルパーになるには?

普段、何気なく利用している駅やビル、ショッピングセンター。健常者がそうした場所で移動するのに大きな障害はありません。しかし、足腰の悪い高齢者や体の不自由な方、視覚障がいや知的障がい、精神障がいを抱えている方がそうした場所で不自由なく移動するのは容易ではありません。そこで重要な役割を担うのが、彼ら移動困難者の外出を支援するガイドヘルパーです。今回は、ガイドヘルパーがどのような仕事か、ガイドヘルパーになるための資格はあるのか、どのような場面でガイドヘルパーが活躍できるのかなどについてお伝えします。


ガイドヘルパーの仕事ってどういうもの?

ガイドヘルパーとは、障がいによって一人で外出することが難しい移動困難者の外出をマンツーマンで支援する仕事のことで、正式には「移動介護従事者」と言います。買い物や通学、通院など生活するうえで必要な外出だけでなく、外食や散歩、旅行といった余暇活動での外出も介助します。それによって、移動困難者の生活の質を維持・向上させ、社会参加やライフスタイルの実現を支援します。

ガイドヘルパーの先駆けは、1974年に東京でスタートした盲人ガイドヘルパー派遣事業です。その後、1981年に脳性まひ者等ガイドヘルパー派遣事業、2001年に知的障害者ガイドヘルパー派遣事業が相次いでスタートしました。2006年に障害者自立支援法が、2013年に障害者総合支援法が施行され、移動困難者のガイドヘルプサービス(移動支援サービス)は拡大されています。

ガイドヘルプサービスが利用できるのは、事故などの後遺症、頚椎損傷や脳性まひなどの疾患による四肢の機能障害を抱える「全身性障がい者」、日常生活や仕事をするのが困難な「視覚障がい者」、知的発達や精神発達に制約が見られる「知的・精神的障がい者」です。

ガイドヘルパーの資格は、障がいの種類別に3種類ある

ガイドヘルパーは、障害者総合支援法で定められた公的な資格です。ガイドヘルパーの資格を取得するには、各都道府県が指定した研修または都道府県に指定された福祉系スクールなどが実施する研修を受講します。試験はありません。なお、カリキュラムや受講料、受講時間数は一律ではありません。研修の実施団体によってばらつきがありますし、資格の有無によっても異なります。

また、障がいによって必要となる知識や介助技術が異なることから、ガイドヘルパーの資格は「全身性障がい者ガイドヘルパー」「視覚障がい者ガイドヘルパー」「知的・精神的障がい者ガイドヘルパー」の3つに分かれています。

全身性障がい者ガイドヘルパー

後遺症や疾患などにより四肢の機能障害を抱えている方、市区町村が外出時の移動支援を認めた方の外出を支援する資格です。外出時に車椅子やストレッチャーを押したり、公共交通機関利用の介助をするほか、外出に伴う着替え、食事、排せつなど、外出時に必要な生活動作を総合的に支援します。

「全身性障がい者ガイドヘルパー養成研修」「ガイドヘルパー養成講座(全身性障がい者課程)」「全身性障がい者移動介護従業者養成研修」などの研修を修了することで、全身性障がい者ガイドヘルパーとして働くことができます。なお、介護職員初任者研修の修了者や介護福祉士の資格保有者は、研修の実施団体によっては必要な受講科目が免除されたり、受講費用が安くなることがあります。

視覚障がい者ガイドヘルパー

視覚障がいにより移動が著しく困難な方の外出を支援する資格です。外出時の移動をサポートするため、周囲の状況についての情報提供、ドアの開閉、代読・代筆などのほか、排せつや食事など外出時に必要な生活動作を支援します。

視覚障がい者ガイドヘルパーとして働くには、同行援護従業者養成研修の一般課程を修了する必要があります。また、同行援護従業者養成研修には応用課程もあり、それを修了すると同行援護サービス事業者のサービス提供責任者になれます。応用課程は一般課程の修了が受講要件となります。

知的・精神的障がい者ガイドヘルパー

知的・精神的障がいや発達障害により、日常生活での行動に著しい困難を有する方の外出を支援する資格です。移動中の安全確保、排せつや食事などの介助を行うほか、外出時に起こり得る危険の回避も行います。これは、知的・精神的障がい者は、精神が不安定になったときに不適切な行動を起こすことが多いとされているからです。そのため、知的・精神的障がい者ガイドヘルパーは、利用者が外出先で不適切な行動を起こさせないように援護したり、問題行動を起こしたときに適切な対処をする必要があるのです。

制度の見直しにより、現在では知的・精神的障害者ガイドヘルパーとして働くには、行動援護従業者養成研修の修了と1年以上の業務経験が必要になります。

ガイドヘルパーになるための研修の内容(神奈川県の例)

ガイドヘルパーになるための研修の内容はどのようなものなのでしょうか。多くの場合、研修は各課程とも16〜20時間程度、3〜5日程度の日程です。なお、それぞれの講義・演習において、介護職員初任者研修の修了者、介護福祉士や社会福祉士などの資格保有者は、科目や時間数を免除される場合があります。詳しくは自身が受講する各地方自治体や団体へ確認をしてください。

ここでは、神奈川県を例に実際の講義内容・時間をご紹介します。

全身性障害者ガイドヘルパー養成研修課程(講義12時間・演習4時間 計16時間)

【講義】
ホームヘルプサービスに関する知識(3時間)
ガイドヘルパーの制度と業務(1時間)
障害者(児)福祉の制度とサービス(2時間)
障害者(児)の心理(1時間)
重度脳性まひ者等全身性障害者を解除する上での基礎知識(2時間)
移動介助にあたっての一般的注意(3時間)
【演習】
移動介助の方法(3時間)
生活行為の介助(1時間)

視覚障害者ガイドヘルパー養成研修課程(講義11時間・演習9時間 計20時間)

【講義】
ホームヘルプサービスに関する知識(3時間)
ガイドヘルパーの制度と業務(1時間)
障害者(児)福祉の制度とサービス(2時間)
移動介助の基礎知識(2時間)
障害・疾病の理解(2時間)
障害者(児)の心理(1時間)
【演習】
移動介助の基本技術(2時間)
屋内の移動介助(2時間)
屋外の移動介助(4時間)
応用技能(1時間)

知的障害者ガイドヘルパー養成研修課程(講義13時間・演習6時間 計19時間)

【講義】
ホームヘルプサービスに関する知識(3時間)
ガイドヘルパーの制度と業務(1時間)
障害者(児)福祉の制度とサービス(2時間)
移動介助の基礎知識(2時間)
知的障害者の障害・疾病の理解(4時間)
障害者(児)の心理(1時間)
【演習】
移動介助の技術(6時間)

ガイドヘルパーが活躍できる場とは?

ガイドヘルパーが活躍できる主な場所は、訪問介護事業所、グループホーム、障害者(児)福祉施設、社会福祉協議会などです。

また、介護職員初任者研修や実務者研修などを修了すると、高齢者を対象とした特別養護老人ホームや高齢者福祉施設などでも働けるようになり、仕事の幅が広がります。なお、グループホームや高齢者施設などで複数の方と外出する機会が多い場合は、マイクロバスを運転できる中型自動車運転免許証があると採用時のアピールポイントになります。

給与は、常勤の場合およそ20万円程度、非常勤の場合は時給1,500〜2,000円程度とされています。

移動困難者の助けとなり、安心を与えられるガイドヘルパー

生まれながらにして障害のあるお子さんや、事故や病気により後遺症がある方、高齢で足腰が悪い方など、さまざまな人が移動に関する悩みを抱えています。ガイドヘルパーは、そうした移動困難な方たちが安心して日常生活を送るうえで欠かせない存在であり、やりがいのある仕事です。身近な人を支えるだけでなく、仕事としてガイドヘルパーを目指すのであれば、資格取得は必須です。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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本記事は2021年05月10日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもとに安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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