精神的な障がいを抱えた人を援助する国家資格、精神保健福祉士とは
精神保健福祉士は法に定められた国家資格で、次のように定義されています。
――精神保健福祉士の名称を用いて、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者をいう。(精神保健福祉法より)
精神保健福祉士として仕事をするには、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施する精神保健福祉士試験(国家試験)に合格し、精神保健福祉士登録簿に登録する必要があります。
精神保健福祉士の受験資格を取得する8つのルート
精神保健福祉士の受験資格を得るには、主に次の8つのルートがあります。それぞれのルートについて見ていきましょう。
(1)福祉系大学(4年制)ルート:
・指定科目履修
・基礎科目履修+短期養成施設等(6ヵ月以上)
(2)3年制福祉系短大ルート:
・指定科目履修+相談援助実務1年
・基礎科目履修+相談援助実務1年+短期養成施設等(6ヵ月以上)
(3)2年制福祉系短大ルート:
・指定科目履修+相談援助実務2年
・基礎科目履修+相談援助実務2年+短期養成施設等(6ヵ月以上)
(4)一般大学(4年制)ルート:一般養成施設等(1年以上)
(5)3年制短大ルート:相談援助実務1年+一般養成施設等(1年以上)
(6)2年制短大ルート:相談援助実務2年+一般養成施設等(1年以上)
(7)社会福祉士登録者ルート:短期養成施設等(6ヵ月以上)
(8)実務経験ルート:相談援助実務4年+一般養成施設等(1年以上)
なお、相談援助実務 の実務経験として認められる要件は、次の5つに該当する業務に、業務時間の約5割以上を従事することです。ただし、対象となる施設や職種は、精神障がい者に対してサービスを提供するものに限定されています。認められる施設や職種には、精神科のある医療機関の精神科ソーシャルワーカーや医療ソーシャルワーカー、精神保健福祉センターや自治体保健所の精神保健福祉相談員、児童相談所の児童福祉司、福祉事務所の家庭相談員や就業支援専門員、更生施設や救護施設の生活相談員などがあります。
(1)精神障がい者の相談
(2)精神障がい者に対する助言、指導
(3)精神障がい者に対する日常生活への適応のための必要な訓練
(4)精神障がい者に対するその他の援助
(5)援助を行なうための関係者との連絡、調整等
精神保健福祉士国家試験の概要
精神保健福祉士国家試験の概要は次の通りです。試験地や試験科目、受験料は第24回試験のものです。
■試験科目(16科目群):多肢選択形式、1問1点の163点満点、総試験時間数275分
(1)精神疾患とその治療
(2)精神保健の課題と支援
(3)精神保健福祉相談援助の基盤
(4)精神保健福祉の理論と相談援助の展開
(5)精神保健福祉に関する制度とサービス、精神障害者の生活支援システム
(6)人体の構造と機能及び疾病
(7)心理学理論と心理的支援
(8)社会理論と社会システム
(9)現代社会と福祉
(10)地域福祉の理論と方法
(11)福祉行財政と福祉計画
(12)社会保障
(13)障害者に対する支援と障害者自立支援制度
(14)低所得者に対する支援と生活保護制度
(15)保健医療サービス
(16)権利擁護と成年後見制度
■試験地(7試験地)
北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県
■試験実施回数
年1回
■受験料
精神保健福祉士のみ受験:24,140円
精神保健福祉士と社会福祉士の同時受験:36,360円
精神保健福祉士の共通科目免除による受験:18,820円
■合格基準
問題の総得点の60%程度を基準として問題の難易度で補正した点数以上、かつ試験科目16科目群すべてにおいて得点があることです。
■合格率
第23回(2021年)は6,165人が受験し、3,955人が合格、合格率は64.2%でした。精神保健福祉士試験の合格率は概ね60%前後を推移しています。
合格者の内訳は、女性が67.7%と過半数を占めています。年齢別では30歳以下が42.1%と半数近くを占めていますが、30代18.8%、40代22.0%、50代13.6%、60歳以上3.5%と、幅広い年代の方が精神保健福祉士試験に合格し、新たなキャリアにチャレンジしています。
精神保健福祉士のお仕事ってどういうもの?
精神保健福祉士のお仕事は、施設での訓練指導や就労支援など、精神に障がいを抱えた人とその家族に対する相談援助です。社会復帰のための生活支援や就労相談など、社会参加をサポートします。就職先は、大きく「医療」「福祉」「行政・司法・一般企業など」と3つに分かれます。
■医療
就職先は、精神科病院、精神科有床診療所のほか、精神科以外の病院・有床診療所、無床診療所、訪問介護ステーションなどの医療機関です。仕事内容は、医療機関の受診や入退院時のサポート、医療費の手配、退院後の社会生活へのスムーズな移行のサポートなど、生活支援が中心となります。
■福祉
就職先は、自立を促す自立訓練施設や就労移行支援施設、生活介護事業所、地域生活への移行を支援する地域活動支援センターなど多岐にわたります。仕事内容は、施設の目的によって大きく異なります。たとえば、自立訓練施設では家事などの日常動作の訓練を、就労移行支援施設では、就職のアドバイスや職場に定着するための支援などを行います。
■行政・司法・一般企業など
行政関係では、自治体や保健所、精神保健福祉センターなどが代表的です。公共職業安定所(ハローワーク)で、障がいの状態に応じた就労支援を行うこともあります。「障害者自立支援法」(2006年施行)や「障害者総合支援法」(2012年施行)などを契機に、精神障がい者の支援も入院から自立支援へと移行しています。それに伴い、地域や家庭、学校、職場などをつなぐ包括的なネットワークが求められています。行政分野で働く精神保健福祉士のお仕事は、就労支援事業や地域での支援活動、住民への普及啓発活動など、主に支援活動の立案・実施です。
司法関係では、保護観察所や刑務所、更生保護施設などで、精神に障がいを抱えた人の社会復帰を支援します。また、心の病を抱える人が増えた現代では、メンタルケアの一環として、学校や一般企業でも精神保健福祉士が活躍しています。
お給料はどのくらいなの?
精神保健福祉士の就労状況を調査した「社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査(令和2年度)」によると、2019年は、男性の平均年収は463万円、女性の平均年収は377万円で、全体の平均年収は404万円でした。
精神保健福祉士は正規職員の割合が8割以上です。そこで、正規職員の平均年収分布もチェックしてみました。最も多いのが300万円以上400万円未満の26.3%、400万円以上500万円未満の21.9%、600万円以上の15.0%、500万円以上600万円未満の12.1%と続きます。
精神保健福祉士の需要高まる
精神保健福祉士は、精神に障がいを抱えた人を身体・精神の両面からサポートし、社会参加を手助けをするお仕事です。対象者一人ひとりの心と向き合わなくてはならないため、専門知識だけでなく対人的なコミュニケーション能力も求められます。人の心に寄り添うことは生易しいことではありませんが、それだけにやりがいのある仕事でもあると言えます。
精神面へのアプロ―チという面ではカウンセラーや臨床心理士といった職業もありますが、精神保健福祉士は国家資格であるという点も魅力です。希少性が高いため、資格を取得しておけば就職活動や就業後の待遇面でもプラスになるでしょう。
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