就職支援パッケージって、どういうもの?
新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響を受けて、倒産する企業や業績が悪化する企業が増加、仕事を失う人が急増しています。NHKによると、新型コロナウイルス感染症に起因する見込みを含めた失職者は、2020年1月末から2021年4月7日までに10万人を超えました。非正規労働者も、緊急事態宣言後の2020年5月末から2021年4月2日までで46,687人が失職しています。
就職支援パッケージは、それら仕事を失った人への介護・障害福祉職への転身を促すために、介護・障害福祉に関する資格取得から就職まで、都道府県の公共職業安定所(ハローワーク)、福祉人材センター、訓練機関が連携して行う就職支援制度です。具体的には、ハローワークが求職者に介護関連の職業訓練の受講をあっせん、訓練機関が介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修などを実施して求職者の資格取得を支援し、最終的には介護・障害福祉職への就業につなげます。
現在失業中で、職業訓練期間中の生活が厳しいという人に対する支援策も用意されています。雇用保険受給者は失業保険を受けながら職業訓練を受講できますし、フリーランスなど雇用保険を受給できない人は一定の要件を満たせば、職業訓練受講給付金として月10万円を受け取ることができます。職業訓練は無料で受講でき、訓練期間は2~6ヶ月程度です。また、職場見学や職場体験なども実施される予定です。
介護職就職支援金貸付事業とは?
介護職就職支援金貸付事業は、介護・障害福祉職に就いた訓練修了者に最大20万円の就職支援金を融資する制度です。就職支援パッケージのひとつとして実施されます。利用者は、継続して2年間介護・障害福祉職員として就労すれば、返済が全額免除されます。ただし、2年以内に離職すると、返済の義務が生じます。厚生労働省では、制度開始から1年間で、最低でも22,000人の利用を目指しています。
対象となるのは、介護・障害福祉関連での就業経験がない人。貸付資格を得るには、介護や福祉の現場で必要とされる資格のうち介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修など指定の職業訓練を修了する必要があります。
訓練修了後に、介護・福祉の事業所などで働くことのできる証明書が発行され、就職支援金の融資が実行されます。なお、就職支援金の使い道について、特に細かい規定はありません。資格取得のための参考書の購入、通勤用の自転車などの購入、ウェアや靴など業務用の衣類の用意、子供の預け先を探すための活動費、転居にかかる敷金・礼金など、就業準備に使うのであれば幅広く認められています。ただし、各都道府県の任意事業であるため、本制度を実施しない自治体もあります。
厚生労働省が就職支援パッケージを導入した背景
厚生労働省はなぜ、2021年4月からこの制度の導入を決定したのでしょうか。その理由としては、主に次の3点が考えられます。
コロナ禍中でも継続する介護職の人手不足
最大の理由は、介護職の慢性的な人手不足です。2019年9月に厚生労働省が公開した「福祉・介護人材確保対策について」によると、2019年6月時点で全産業平均の有効求人倍率が1.37倍なのに対し、介護関係の職種の平均は4.08倍。都道府県別に見ても、介護関係の職種の有効求人倍率が全産業平均の有効求人倍率を下回っている地域はありません。特に、東京都は7.05倍と突出しており、都市部での人材確保が難しいことが伺えます。このデータは2019年6月と、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前ですが、直近の2021年2月の有効求人倍率でも3.7倍です(全産業平均は1.04倍)から、コロナ禍中でも人材不足の状況が大きく変わることはないでしょう。
増加を続ける失業者への支援
介護業界では慢性的な人手不足ですが、労働人口全体では新型コロナウイルス感染症による景気減退で、失業者が増加しています。2021年3月に総務省が発表した「労働力調査(2021年2月分)」(2021年3月30日)によると、完全失業者数は194万人。これは前年同月比35万人の増加で、かつ13ヶ月連続で増加を続けています。また、完全失業率も上昇しています。年平均推移では、2018~2019年は2.4%でしたが、2020年は2.8%と大きく上昇しました。
労働移動の促進
特定の業界では人手不足が続いているのに対して、失業者は増加している。このミスマッチを防ぎ、労働移動を促進させるために、政府はさまざまな施策を打ち出してきました。代表的なものとしては、企業の経営状況の悪化を受け離職を余儀なくされる労働者に対し、再就職支援または早期雇入れ支援を実施した企業に対して支給される「労働移動支援助成金」があります。介護職就職支援貸付事業も、こうした労働移動促進施策の一環です。介護業界への人材の流入、定着を目指した支援と言えるでしょう。
介護職就職支援金の貸付資格を得る職業訓練には何がある?
ひと口に介護の資格といっても、その種類は多様です。ここでは、介護職就職支援金の貸付資格を得るために必要な介護資格のなかでも基礎的なものを紹介します。
介護職員初任者研修
食事、入浴、排せつなど、基本的な身体介護を学ぶ研修です。介護職に就くうえでの入門と位置付けられており、訪問介護をする際には必須となります。「介護の基本」「認知症の理解」「老化の理解」「こころとからだのしくみと生活支援技術」など、計9科目130時間の講習を修了したうえで、筆記による修了試験に合格する必要があります。
介護福祉士実務者研修
介護職員初任者研修より高度な介護支援、たん吸引や経管栄養といった医療的なケアなどを提供するための研修です。資格取得のためには、「人間の尊厳と自立」「コミュニケーション技術」「医療的ケア」など、20科目450時間の講習が必要です(他の保有資格によって、カリキュラムの一部が免除されることがあります)。国家資格である介護福祉士資格を取得するためには、この実務者研修の修了と3年以上の実務経験が必要です。
福祉用具専門相談員
要介護者やその家族が福祉用具をレンタルもしくは購入する際などに、選択のポイントや使い方のアドバイスをしたり、ケアマネジャーと協力して福祉用具の使用に関するケアプランを作成する専門職です。介護保険の指定を受けた福祉用具の貸与・販売事業所では、2名以上の配置が義務付けられています。都道府県から指定を受けた研修機関で50時間の講習を受講したうえ、修了評価試験に合格すれば資格を取得できます。
新たな職として介護に興味がある人は、就職支援パッケージや介護職就職支援金の利用を
コロナ禍で仕事を失った人は少なくありません。一方、介護・福祉職は慢性的な人手不足で、未経験、無資格からでも業務に従事することができますから、新たに職を探している人にとっては挑戦しやすい職種と言えるでしょう。
しかし、介護・福祉職は専門職ですから、資格があったほうが待遇や給与は優遇されます。そこで活用したいのが、就職支援パッケージや介護職就職支援金です。同制度を利用することで、資格取得から就職まで、生活費などをサポートしてもらいながら学ぶことができます。介護職は再就職先の選択肢から外していたという人も、手に職をつけられる介護職を今一度検討されてみてはいかがでしょうか。
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