医師をサポートする! 人気急上昇の医療秘書は医療事務とどう違う?

医師をサポートする! 人気急上昇の医療秘書は医療事務とどう違う?

景気の波に関係なく需要が見込める医療のお仕事。中でも最近人気を集めているのが、医師をサポートする「医療秘書」のお仕事です。医療機関で責任ある仕事に就きたいと思っている方や、秘書経験・コミュニケーション力を活かした仕事に就きたいと思っている方には、まさにうってつけのお仕事です。今回は、同じ医療機関で受付・事務に当たる医療事務との違いや医療秘書を目指すための資格についてもご紹介します。コロナ禍で医療従事者の重要性が改めて見直されている今、医療現場の最前線で働く医療秘書を目指してみませんか。


医療秘書のお仕事とは?

医療秘書とは、主に医師が行う事務作業を代行する仕事のことです。秘書業務を行わない場合は、「医療クラーク」「医療事務作業補助者」「ドクターズクラーク」とも呼ばれます。治療や診察のほかにもさまざまな事務作業をこなさなくてはならない多忙な医師を補助するために、2008年度の診療報酬改定で追加された医師事務作業補助体制加算に対応して導入されました。

医療秘書には、大きく分けて次の5つの役割があります。これらすべてをこなすのは大変だと思うかもしれません。しかし、必ずしもすべての業務を担当するわけではありません。勤務先の医療機関によって、担当する業務範囲は異なります。また、院長や部長といった個人につく医療秘書になるだけでなく、医局の秘書として組織のサポートに回る場合もあります。

(1)医療文書の作成代行:診断書や主治医意見書、処方箋、紹介状など医療に関する書類作成や名刺などのファイリング、入院手続きや各種保険関係書類の作成、退院時要約(退院サマリー)の作成といった入退院に関わる事務作業などを代行します。

(2)カルテなどの記載・入力・管理の代行:紙や電子カルテの記載と入力の代行、検査結果やレントゲンフィルム、カルテ管理など、患者の医療情報に関する整理、処方箋のオーダー支援などを代行します。

(3)情報管理業務:医師の研究補助、論文の検索やデータ管理、院内の統計業務、カンファレンス(症例検討会)や研修の準備など、医師がより質の高い医療を提供できるようサポートします。

(4)行政への報告代行:医療事故や医療過誤を防止するためのインシデントリポートの作成・届け出を代行します。また、地域医療を円滑に進めるための医療情報システムへの入力、感染症等のデータ収集・入力・分析などを行います。

(5)秘書業務:担当している医師や院長のスケジュール管理や来客・電話対応、資料の準備など、一般企業の秘書と同様の業務を担います。

医療事務や医療秘書、何が違うの?

医療事務と医療秘書は、メインとなる業務が異なります。医療事務は主に医療機関の顔として、受付業務やカルテ作成のための情報登録、診察の案内などを行います。診療報酬の点数計算や明細書(レセプト)の作成といった会計業務も医療事務のお仕事です。

一方、医療秘書は医師のサポートがメインとなります。診察に同席してカルテを入力することもありますし、ナースステーションで伝票の整理なども行います。

ただ、医療機関によっては、受付や会計業務など医療事務の仕事を医療秘書が並行して行っているケースもあります。ただ、厳密に区別していない医療機関もあるため、業務範囲は求人内容から判断しましょう。

医療秘書はこんな人におすすめ!

多忙な医師を支える医療秘書のお仕事は、こんな方におすすめです。

●責任のある仕事に就きたいと思っている方
医療秘書は、病院経営者や院長、医師といった多忙かつ重要な立場にある人を支えるお仕事です。こうした方々は日々の診療だけでなく学会や研究活動などスケジュールに追われていることがほとんど。円滑な業務をサポートする秘書の役割も重大です。

●医療事務の中でも、現場に近いお仕事をしたい方
受付や会計がメインとなる一般的な医療事務に比べて、カルテの作成代行や研究補助を行う医療秘書のお仕事はより現場に近しい仕事。その分、医療に関する専門知識や海外の文献検索・メールのやりとりのための英語力といったスキルが求められる可能性があります。

●一般企業での秘書経験を活かして医療の仕事がしたい方
医師の秘書として、来客や業者の対応に当たることもあります。一般企業の秘書に求められる立ち居振る舞いや心遣い、ビジネスマナーは必須です。多忙な医師のスケジュール管理についても、秘書経験はきっと役に立つことでしょう。

●コミュニケーション力や専門性を生かした仕事に就きたいと思っている方
医療秘書として、患者とのコミュニケーションが求められる場面もあります。また、院内でのさまざまな業務に当たるため、各部署との連携も必要になります。医療秘書は、多くの人とやりとりするため、コミュニケーション能力が問われるお仕事です。

一般的な秘書と医療に関する知識の両方が求められる医療秘書は、専門性の高いお仕事だと言えるでしょう。

医療秘書を目指すための資格3選

医療秘書になるために必須の資格はありませんが、専門性が問われる業界のため資格を取得しておくと、就職には有利になります。医療事務関係の資格は多数ありますが、中でも医療秘書を目指す方におすすめの資格を紹介します。

医療秘書技能検定

一般社団法人医療秘書教育全国協議会が主催する民間資格で、医療秘書としての専門知識と技能を認定するものです。1級、準1級、2級、3級の4段階 に分かれており、試験は年2回実施されています。各級の認定水準は以下の通りです(同協議会HPより引用)。

・3級:医療秘書として、それぞれの領域について基礎的な知識と技能を持ち、一般的な業務を遂行することができる。

・2級:医療秘書として、それぞれの領域について一般的な知識と技能を持ち、やや複雑な業務を遂行することができる。

・準1級:医療秘書として、それぞれの領域について専門的な知識と技能を持ち、やや複雑多岐な業務を遂行することができる。

・1級:医療秘書として、それぞれの領域について高度な知識と技能を持ち、複雑多岐な業務を専門的に遂行することができる。

試験の出題内容は次の3分野です。合格基準は、3つの領域の正解の合計が全体で180点以上、かつ各領域の正解が60%以上であることです。

 領域Ⅰ(100点):医療秘書実務/医療機関の組織・運営/医療関連法規
 領域Ⅱ(100点):医学的基礎知識/医療関連知識
 領域Ⅲ(100点):医療事務(レセプト作成/診療報酬点数表の理解)

日本医師会認定医療秘書

日本医師会が認定する医療秘書の資格です。取得するには、各都道府県医師会の設立する医療秘書学院、専門学校、4年制大学や短大といった認定養成機関で規定のカリキュラムを履修した後に認定試験を受験し合格すること、秘書検定や情報処理、保険請求事務などの検定を取得することが求められます。

試験は年1回で、出題内容は次の通りです。

(1)医療・保健・福祉基礎教科
 健康とは、疾病とは/患者論と医の倫理/からだの構造と機能/臨床検査と薬の知識
 医療にかかわる用語/コミュニケーション論

(2)医療秘書専門教科
 医療秘書概論/医療秘書実務/医療情報処理学/医療情報処理演習/医療関係法規概論

医療機関が新たに医師事務作業補助者を配置した場合、6ヵ月の研修期間が義務づけられていますが、日本医師会認定医療秘書の資格取得者は、基礎知識習得のための32時間以上の研修については免除されます。

このように、日本医師会認定医療秘書は取得までのハードルが高い分、就職にも生かしやすい資格といえるでしょう。令和3年3月時点で、11,108人 が認定を受けています。

医師事務作業補助技能認定試験 (ドクターズクラーク)

一般財団法人日本医療教育財団と病院団体・公益社団法人全日本病院協会が共催する認定試験です。医師事務作業補助職として必要な基礎知識と技能を評価するもので、合格者には「ドクターズクラーク」の称号が与えられます。

受験するには、次の2つのいずれか、あるいは認定委員会がこれらと同等と認められる必要があります。

(1)認定委員会が認定規程により定める「医師事務作業補助技能認定試験受験資格に関する教育訓練ガイドライン」に適合すると認めるものを履修している
(2)医師事務作業補助職として6ヵ月以上(32時間以上の基礎知識習得研修を含む)の実務経験を持つ

試験は年6回で、出題内容は次の通りです。合格基準は、学科・実技の得点率が70%であることです。

(1)学科
 医療関連法規/医療保障制度/医学一般/薬学一般/医療と診療録
 医師事務作業補助業務/病院管理

(2)実技
 医師事務作業補助業務

医療秘書の需要は今後も高まる

ここまで、医師をサポートする医療事務のお仕事や資格について見てきました。医師の負担を減らすために、国も医療秘書の採用を後押ししており、一定の条件のもとで設置した医療機関には保険点数が加算されるようになりました。 そのため、大病院を中心に医療秘書の需要が高まっています。診療報酬の改定に伴って算定が可能な医療機関も拡大しており、個人で運営しているクリニックなどでも求人が増えるなど、医療へのニーズが多様化する中で注目のお仕事といえます。医療秘書として活躍したい方は、専門知識やスキルの証明として資格の取得を目指すことをおすすめします。

本記事は2021年09月10日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもとに安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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