医療機関に浸透する電子カルテとレセプトのオンライン請求
医療業界のIT化の中核となるのは、電子カルテと電子レセプトのオンライン請求です。電子カルテとは、従来、紙に記載していた患者や診療録などの情報をデータ化、管理するシステムのこと。電子レセプトのオンライン請求とは、診療報酬明細書(レセプト)をレセプト作成専用システムを使って作成し、健康保険組合などの支払い機関にオンラインで請求することです。
厚生労働省の「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(2017年)によると、診療所全体あるいは一部でカルテを電子化している一般診療所は約4割 。「日本再興戦略(改訂2015)」で、政府が2020年度までに400床以上の一般病院の普及率を90%に引き上げる目標を掲げたこともあり、400床以上の一般病院に限れば8割を超えています。
また、社会保険診療報酬支払基金によると、電子レセプトによる請求はすでに9割を超え、そのうち6割がオンラインによるものです(「レセプト請求形態別の請求状況(2020年4月分) 」)。一般病院に限れば電子レセプトによる請求は、400床以上が99.0%、400床未満が99.3%。オンライン請求も、400床以上が98.7%、400床未満が96.9%。一般病院は、ほぼIT化されていると言ってもいいでしょう。
このように医療機関におけるIT化は着実に進行しています。世の中のデジタル化への移行に伴い、医師のPCスキルも従来よりもはるかに上がっています。しかし、中にはPC操作を苦手とする医師もいます。その場合、医師が手書きした指示書を電子カルテに入力するのは医療事務の仕事。つまり、今の日本で医療事務の仕事をするのならば、もはやPCスキルは必須と言えるのです。
電子カルテ関連の資格
■電子カルテ実技検定試験
電子カルテシステムの操作スキルと電子カルテの作成能力を評価する試験です。実施団体は医療秘書教育全国協議会。
●受験資格:なし
●受験方法:一般受験者は協議会に問い合わせ、会員校の受験者は会員校(参考書、ノートの持ち込み可)
●試験日:年2回
●受験料:一般受験者6,300円、会員校の受験者5,300円
●試験内容:実技試験(50分)。
診察時における医師と患者とのやり取りをシミュレーション化した問答形式問題を基に、以下について電子カルテシステム(診療所・病院外来用)を操作し、電子カルテを作成する。
(1)医師等の権限設定や「真正性の確保」を意識した電子カルテの入力操作
(2)初診時の問診票の入力・必要データの電子カルテ画面への取り込み
(3)既往症、原因、主要症状等についてSOAP形式に関する知識にしたがった入力判断。補足ツール(テンプレート、シェーマ)や標準マスタ使用による病名情報の登録などの操作
(4)処方、手術、処置等について記録するとともに点数算定を意識した入力
(5)検体検査・単純撮影に関し、一連のオーダー処理
●合格基準:60点満点で、60%以上の正解
■医療情報システムオペレーター2級
電子カルテ業務の遂行に必要なPCスキルの能力を評価する試験です。実施団体は全国医療関連技術審査機構で、関西中心に展開しています。また、過去1年以内の受験で、領域I、IIのいずれかが得点率70%以上の場合、不合格の領域のみを受験することもできます。
●受験資格:なし
●受験方法:会場受験
●試験日:姫路会場では毎週水曜日、毎月第3土曜日。神戸会場、明石会場、洲本会場、姫路会場、小野会場、津山会場は応相談
●受験料:6,500円(税込)
●試験内容:領域I 学科、領域II 実技
【領域I】選択式(60分)
コンピュータの基礎知識、院内システムに関する知識、医療用語の知識
【領域II】電子カルテ・オーダリングシステムを用いた操作(120分)
パターン別患者7名分の電子カルテ作成
●合格基準:領域I・IIともに得点率70%以上
電子レセプト関連の資格
■医事オペレータ技能認定試験(メディカルオペレータ)
医事オペレータとして医療事務業務の遂行に必要なPCスキルの能力を評価する試験です。合格者には「メディカルオペレータ」の称号が与えられます。実施団体は日本医療教育財団。
●受験資格:なし
●受験方法:各都道府県内の教育機関施設等での会場受験(教材の持ち込み・閲覧可)
●試験日:年12回(毎月)
●受験料:8,800円(税込)
●試験内容:実技試験4問(コンピュータ入力60分、レセプト出力および点検10分、合計70分)
基本操作、患者登録、病名登録、外来および入院診療内容入力、レセプト出力、成果物の点検
●合格基準:得点率70%以上
■医事コンピュータ能力技能検定試験
医療事務業務の遂行に必要なPCスキルの能力を評価する試験です。実施団体は日本医療事務協会。
●受験資格:日本医療事務協会が認定する医療事務コンピュータ講座の修了者、一般受験申込み者
●受験方法:会場受験(教材、資料の持ち込み・閲覧可)
●試験日:要問い合わせ
●受験料:6,600円(税込)
●試験内容:実技試験(1時間)、診療報酬明細書の作成(外来・入院)各1問
C&C医療教育統合システムのソフトを使用して、カルテから患者情報と医療費を入力する。入力項目は、基本診療料、医学管理料等、在宅医療(往診)、検査、画像診断、投薬、注射、リハビリテーション、処置、手術、麻酔、病理診断。
●合格基準:問題の総得点の70%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点
■医事情報システムオペレーター2級
医療事務業務の遂行に必要なPCスキルの能力を評価する試験です。実施団体は全国医療関連技術審査機構で、関西中心に展開されています。また、過去1年以内の受験で、領域I、IIのいずれかが得点率70%以上の場合、不合格の領域のみを受験することもできます。
●受験資格:なし
●受験方法:会場受験(教材、電卓の持ち込み可)
●試験日:姫路会場では毎週水曜日、毎月第3土曜日。神戸会場、明石会場、洲本会場、姫路会場、小野会場、津山会場は応相談
●受験料:6,500円(税込)
●試験内容:領域I 学科、領域II 実技
【領域I】選択式(20分)
コンピュータの基礎知識、医療用語の知識、医療保険制度・公費・福祉の知識
【領域II】レセプトコンピュータを用いた入力操作(80分)
外来患者・入院患者各1名分のレセプト作成
●合格基準:領域I・IIともに得点率70%以上
■医事コンピュータ技能検定試験
医療秘書教育全国協議会が実施する検定試験です。準1級、2級、3級の3つのレベルがあり、2級以上の合格で医師事務作業補助技能認定の1つの条件を満たします。各級で求められるPCスキルは次の通りです。
・3級:医療事務、医事コンピュータについての基礎的な知識があり、カルテや診療伝票を基に医事コンピュータを用いて、正しいレセプトを作成できる
・2級:医療事務、医事コンピュータについての一般的な知識があり、カルテや診療伝票を基に医事コンピュータを用いて、正しいレセプトを速やかに作成できる
・準1級:医療事務、医事コンピュータに関する専門的な知識があり、やや複雑多岐な業務を遂行することができる。併せて、DPC制度全般についての正しい理解と深い知識を持ち、やや複雑なカルテを基に専用ソフトを用いてDPCレセプトを作成できる
●受験資格:なし
●受験方法:会場受験(領域I、IIIはノートや参考書の持ち込み自由、領域IIは不可)
●試験日:各級とも年2回
●受験料:3級6,400円、2級7,500円、準1級8,600円
2・3級併願13,900円、準1級・2級併願16,100円
●試験内容:学科試験、実技試験
【学科試験】領域I:医療事務(60点)、領域II:コンピュータ関連知識(60点)
・3級
領域I:(1)医療保険制度の概要と診療報酬制度のシステムについての知識、(2)被保険者証その他の受診資格証の種別・患者負担金等の理解、(3)診療報酬点数表の各部の通則・告示・通達の基本的な知識、(4)外来診療(在宅医療を含む)に関わる点数算定についての正しい知識、(5)「厚生労働大臣が定める基準等について」に関する基本的な知識、(6)「診療報酬請求書・明細書の記載要領について」の外来診療に関する項目の記載の理解
領域II:(1)コンピュータの内部処理(情報表現)の理解、(2)コンピュータの5大装置と機能の理解、(3)周辺装置の種類と特徴の理解、(4)インターフェースの種類と特徴の理解、(5)ソフトウェアの種類と特徴の理解、(6)オペレーティングシステムの種類と特徴の理解、(7)アプリケーションソフト(ワープロ)の基本操作の理解
・2級
領域I:(1)社会保険各法と公費負担各法等に関する相当の知識、(2)診療報酬点数表の各部の通則・告示・通達に関する相当の知識、(3)複雑な外来診療に関わる点数算定についての正しい知識、(4)入院診療に関わる点数算定についての正しい知識、(5)「厚生労働大臣が定める基準等について」に関する相当な知識、(6)「診療報酬請求書・明細書の記載要領について」の多岐の項目についての記載の理解、(7)診断群分類別包括支払制度(DPC)についての基礎的な知識
領域II:(1)コンピュータの処理形態とネットワークの概要の理解、(2)インターネットの概要と活用方法の理解、(3)アプリケーションソフト(表計算)の基本操作の理解、(4)データベースの概要の理解、(5)基本的なファイルの種類と保存形式の理解、(6)保健医療情報システムの概要の理解
・準1級
領域I:(1)社会保険各法と公費負担各法等についての実務上の幅広い知識、(2)診療報酬点数表の各部の通則・告示・通達の深い知識、(3)広い範囲の医療行為が行われている症例の複雑な点数算定についての正しい知識、(4)「厚生労働大臣が定める基準等について」に関する深い知識、(5)「診療報酬請求書・明細書の記載要領について」の請求書・明細書の細部までの理解、レセプト記載やシステムの誤りの指摘、(6)審査機関に関する正しい知識、返戻・減点レセプトへの正しい対応、(7)診断群分類別包括支払制度(DPC)についての多岐にわたる知識
領域II:(1)ネットワークとサーバの機能の理解、(2)セキュリティに関するリスクと対策の理解、(3)個人情報と権利の保護の概要の理解、(4)医療情報に関する国の施策の理解、(5)医療情報の標準化の理解、(6)電子カルテシステムの法制度と基本操作の理解
【実技試験】領域III:実技(オペレーション)(60点)
・3級:(1)医事コンピュータを使用して、簡単な算定要件を付加した、平均的な外来診療例のカルテ・伝票からのレセプト作成、(2)合計点数から保険の負担区分により、一部負担金の計算
・2級:(1)医事コンピュータを使用して、やや複雑な算定要件、施設基準を付加した平均的な外来診療例、入院診療例のカルテ・伝票からのレセプト作成、(2)コンピュータの特徴をつかみ誤りの発生する個所の理解、(3)合計点数から保険の負担区分により一部負担金の計算
・準1級:(1)DPC制度の理解、(2)医療機関別係数の体系の理解、DPCコーディングについての正しい理解、(3)DPCにおける算定ルールについての正しい理解、(5)正確なDPCレセプトの作成
●合格基準:各領域60%以上の正答で合格
これからの医療業界は、医療の知識とPCスキルが必要となる
景気に左右されにくいとされる医療事務の仕事。医療業界のIT化によって、医療の知識だけではなく、PCスキルも求められるようになりました。まだ電子カルテが導入されていない、オンライン請求を行っていない医療機関はあるものの、医療の質的向上と効率化、病院内外における患者情報の共有と情報提供のスピード、手軽さを考えれば、いずれは導入されるはずです。つまり、今後、医療事務のお仕事をしていくには、PC操作は必要不可欠なスキルなのです。
そこで着目されるのは、今回ご紹介した6つの資格試験。試験で重視されるのは実技。つまりPC操作です。いずれも民間資格ですが、取得していれば、面接時にPCスキルがあることを確実にアピールできるでしょう。
習い事・趣味のスクール・レッスン探しサイト グッドスクールがお届けする、習い事・趣味に関する情報をご紹介いたします。