認知症とはどういう病気?
「認知症施策の総合的な推進について」によると、認知症とは「いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態」のことです。代表的な疾患としては、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉型認知症、脳血管性認知症などで、妄想や幻覚、せん妄、抑うつ、暴力行為、人格変化、不潔行為、徘徊などの症状を示します。こうした症状は、「記憶障害」「実行機能障害」「理解・判断力の障害」「見当識障害」といった中核症状が起こすとされています。
冒頭で説明したように、認知症の高齢者は今後ますます増えていくことでしょう。しかし、認知症は身近に患者がいないとなかなか理解することができません。だからこそ認知症を正しく理解し、適切な対応方法を知ることが重要となるのです。政府もその重要性を認識しており、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)では認知症への理解を深めるための普及・啓発活動を推進、そのひとつとして認知症サポーターを養成しています。
こうした動きは民間にも広がっています。そのひとつが、2014年に公益財団法人日本ケアフィット共育機構が創設した認知症介助士です。同機構では、認知症介助士を「超高齢社会の現代において、認知症であっても安心して社会参加することができるよう、認知症の人に寄り添うコミュニケーションや接遇(接客)・応対、環境作りを身につける資格」と定義、認知症への理解を支援しています。
認知症介助士の資格を取得するには
認知症介助士の資格を取得する方法は2通り。ひとつは、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が主催する検定試験付きの認知症介助士セミナーを受講し、受講後の検定試験に合格すること。もうひとつは、全国各地で実施している検定試験に合格することです。
検定試験は、選択式の30問で、試験時間は40分。合格基準は30点満点で21点以上ですが、同機構によると合格率は9割以上だそうです。受験料は3,300円(税込)。検定試験だけを受験する場合、(1)共育センターでのマークシート方式、(2)全国のCBTセンターで会場に設置されたパソコンを使うCBT方式、(3)インターネット経由で受けるIBT方式の3種類から選択できます。
認知症介助士セミナーは東京会場、名古屋会場、大阪会場は月1~2回実施しています(他の地域での開催は不定期)。受講料は、検定試験の受験料を含めて16,500円(税込)、テキスト代が3,300円(税込)、検定試験対策問題集が2,200円(税込・任意)。なお、検定試験は受けられませんが、ZOOMを利用したオンラインセミナーも実施しています。
認知症介助士セミナーのカリキュラム
認知症介助士セミナーは、認知症への理解を深め、認知症の人への適切なケアを身につけることを目的としたものです。公認テキストを教材にした講義、具体的な事例をもとにしたケーススタディ、認知症の方への接遇・接客のロールプレイなど、認知症の方への対応を実践形式で学びます。講習時間は5時間。講習後に検定試験を受けますが、講義では検定試験対策も行いますので、受講者の多くが合格しているようです。カリキュラムの内容は次のとおりです。
・高齢社会の進展と認知症の基礎知識
・認知症の主な種類と症状
・認知症の人の心理状態
・グループワーク
・身近な事例から認知症の人の困りごとや応対を考える
・認知症の人への接遇
・関連法規と制度
・検定試験(※検定試験セットのセミナーの場合)
認知症介助士検定試験に合格するポイント
認知症介助士の資格を取得するには、認知症の基礎知識を理解する必要があります。特に、三大認知症といわれる「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」については、それぞれの違いや対応方法といった知識は必須です。
そのうえで、どのような介助をしていくべきかの知識も求められます。それは、認知症の介助の原則が「本人の記憶になければそれは事実ではない」「本人が思っていることについては本人にとって紛れもない事実である」だからです。たとえば、実際には食事をしていても、本人が食事をしていないと思っているのであれば、本人にとっては食事をしていないことが事実なのです。これを頭ごなしに間違っていると否定するのではなく、本人にとってはそれが事実であることを認め、そのうえで本人が納得できるような対応が求められます。
また、認知症の予防に関する知識も欠かせない知識のひとつです。認知症予防に効果のある運動とはどのようなものなのか、どのような食事、栄養素が足りないと認知症になりやすくなるのかなどの知識が求められます。
認知症に関する法律として覚えておきたいのが、認知症の予防を推進しつつ、認知症患者が尊厳を保持しながら社会の一員として尊重される社会の実現を図るための認知症基本法案です。制度としては、認知症になってしまい、判断能力が低下した患者の財産管理、生活に必要な契約代理を行うための成年後見人制度があります。こうした法律や制度への理解も、認知症介助士になるための重要な知識です。
認知症介助士の検定試験に合格する近道は、認知症介助士セミナーを受講することです。しかし、独学でも公認テキストで学び、検定試験対策問題集をしっかり解けば合格することは難しくありません。ただ、医療や介護の知識・スキルがまったくない方には、認知症の人への接遇や関連法規などは少し難しいかもしれません。その場合には、セミナーを受講することをおすすめします。
認知症の人をサポートするために、認知症介助士の資格を生かす
認知症介助士の資格を取得し、仕事に生かす場合、最も多い就職先は認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、介護老人保健施設、養護老人ホームといった介護施設や医療機関です。特にグループホームは認知症の高齢者が集まって共同生活する場ですので、有望な職場と言えます。
介護・医療施設以外では、旅館ホテルなどの宿泊施設、駅、大型ショッピングモールなど、高齢者を含め多くの人が集まる施設です。また、就職先ではありませんが、高齢者が集まるイベントでのボランティアや、家族が認知症になった際のサポートを行ううえでも認知症介助士の資格は大いに役立つでしょう。
認知症の症状は個人差が大きく、それぞれの症状に合った対応が必要となります。また、単に知識を詰め込むだけではなく、一人ひとりを受け入れ、寄り添える存在でありたいと思うことが大切です。世界的に進む少子高齢化。なかでも日本は、世界に類を見ないスピードで進んでいます。認知症介助士はこうした時代にマッチした資格です。認知症患者が増加するにつれて、その需要はますます高まっていくことでしょう。
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