介護職員や要介護者の負担を軽減すると期待されている介護ロボット、コロナ禍で普及が進むか

介護職員や要介護者の負担を軽減すると期待されている介護ロボット、コロナ禍で普及が進むか

介護業界の人手不足解消は、少子高齢化が進む日本において喫緊の課題です。しかし、高齢化のスピードに雇用が追いつかない現状では、人の雇用以外にも何かしらの対策が求められます。そこで、今、大きな注目が集めているのが介護ロボットの活用です。最近では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防としても注目されています。今回は、介護ロボットの概要・種類、求められる背景から、介護ロボットの最新動向についてお伝えします。


介護ロボットって、どういうもの?

ロボットというと、人型やペット型、もしくは工場や製造現場で自動化を進めている機械を思い浮かべるかもしれません。しかし、介護現場で活躍するロボットはそうしたイメージに近いものもあれば、まったく異なるものもあり、多岐にわたります。

厚生労働省では、ロボットを「情報を感知(センサー系)、判断し(知能・制御系)、動作する(駆動系)という3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。そして、介護ロボットとは「ロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器」のことです。同省では、介護ロボットの例として、要介護者の移乗を支援する装着型パワーアシスト、移動を支援する歩行アシストカート、排せつを支援する自動排せつ処理装置、認知症や寝たきりの方を見守る見守りセンサーを挙げています。

なぜ、介護ロボットが求められるのか?

厚生労働省が2021年6月に発表した「一般職業紹介状況 」によると、2021年5月の介護サービスの有効求人倍率は3.37倍。全体の平均0.94倍から見るとかなりの高倍率です。また、経済産業省の将来推計(「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会報告書」2018年4月9日)によると、介護職員の需要は年々増加し、2025年で32万人、2035年には68万人不足すると推定されています。

今後、さらなる少子高齢化が避けられないとなれば、雇用を進めていくと同時に人手不足を解消する対策が欠かせません。そこで、国を挙げて取り組みを始めているのが介護ロボットの開発、普及なのです。また最近では、COVID-19の感染予防としても注目されています。

介護ロボットには、どんな種類があるの?

前述したように、介護ロボットは「センサー系」「知能・制御系」「駆動系」の3つの要素が基本となります。そして、厚生労働省と経済産業省が介護ロボットを開発・導入を進めていくうえで重点分野としているのは、次の6分野13項目 です。

移乗支援

●装着:要介護者がベッドや車椅子などから立ち上がる際、パワーアシスト機能で介助者を補助する装着型の機器。介助者が装着する

●非装着:要介護者をベッドや車椅子などから移動する際、介助者の負担を減らすための非装着型の機器。「要介護者を正面から抱え込む方式」「ベッドに敷いたシーツごと抱き上げる方式」「ベッドと車椅子が合体したベッド一体型」などがある

移動支援

●屋外:高齢者や要介護者の外出をサポートする歩行支援機器。買い物時の荷物も安全に運搬できる

●屋内:高齢者や要介護者の屋内移動や立ち座りをサポートする歩行支援機器。特にトイレへの往復、トイレ内での姿勢保持の際に効果を発揮する

●装着:高齢者や要介護者の足に装着することで外出をサポートする移動支援機器。転倒予防や歩行補助をする

排せつ支援

●排せつ物処理:排せつ物の処理にロボット技術を用いた、設置位置調節機能を備えたトイレ

●トイレ誘導:高齢者や要介護者の排せつ予測をし、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器

●動作支援:トイレ内での下衣の着脱から排せつまでの一連動作を支援する機器

見守り・コミュニケーション

●施設:センサーや外部通信機能を備え、要介護者の徘徊や転倒といった万が一の際の行動を感知し、通知する。介護施設で使用する機器のプラットフォーム

●在宅:転倒検知センサーや外部通信機能などを備えた、在宅介護で使用する機器のプラットフォーム。要介護者に万が一のことがあったときに、介護者のスマートフォンや専用機器に通知する

●生活支援:高齢者が発する声や表情を基に状況を判断し、情報のやり取りを行う高齢者とのコミュニケーションに特化した機器。高齢者の状況を画像や動画で伝達する機能を備えた機器もある

入浴支援

●入浴支援:高齢者が一人で入浴する際、浴槽への出入りする際の一連の動作を支援する機器

介護業務支援

●見守り・移動支援・排せつ支援など、ここまで紹介した5分野の介護ロボットから収集した情報を収集・蓄積、それらデータを基に高齢者や要介護者に必要な支援に活用する機器

介護ロボットは、施設にどのくらい導入されているか

厚生労働省が発表した「介護ロボットの開発と普及のための取り組み」によると、介護ロボットを導入している施設はわずか24.6%(2017年)。つまり75.4%の施設では、介護ロボットを一切、導入していません。少し前の調査とはいえ、介護業界の人手不足を解消するうえで、この導入率はかなり低いと言わざるをえないでしょう。

なぜ、人手不足であるにもかかわらず、介護ロボットの導入が進んでいないのでしょうか。同資料では、その理由についてもアンケートを取 っています。

1位 導入する予算がない(59.3%)
2位 誤作動の不安がある(30.2%)
3位 清掃や消耗品管理などの維持管理が大変である(29.9%)
4位 投資に見合うだけの効果がない(27.3%)
5位 設置や保管等に場所を取られてしまう(27.2%)
6位 技術的に使いこなせるか心配である(26.5%)
7位 どのような介護ロボットがあるのかわからない(24.9%)
8位 ケアに介護ロボットそれ自体を活用することに違和感を覚える(22.2%)
9位 介護現場の実態に適う介護ロボットがない、現場の役に立つ介護ロボットがない(17.7%)

この結果から、介護ロボットが普及していない主な要因は、介護ロボット導入の予算が組めないことと、介護ロボットの情報が不足していることにあることがわかります。特に、誤動作や維持管理、技術的に使いこなせない、介護ロボットへの違和感などがそれぞれ20~30%となっていることから、介護の現場に介護ロボットの有用性がしっかりと伝わっていない現状と、実際に見て使って試す場が少ないことが浮かび上がってきました。

政府も介護ロボットの導入を支援している

介護ロボットの情報が不足していることが普及の妨げになっていることはもちろん、それ以上に大きな課題となっているのは、多くの施設で介護ロボットを導入する予算が取れない点です。

そこで、国や地方自治体では介護ロボットの開発・導入に対して、さまざまな補助金・助成金の支給を行っています。たとえば、地域医療介護総合確保基金では、介護ロボットの導入に対して1機器30万円(移乗支援・入浴支援ロボットに関しては上限100万円)、見守りセンサーなどの導入に伴う通信環境整備については上限750万円の補助を行っています(2020年7月30日時点)。対象となる介護ロボットは、装着型パワーアシスト(移乗支援)、非装着型離床アシスト(移乗支援)、入浴アシストキャリー(入浴支援)、見守りセンサー(見守り)など、移乗支援、移動支援、排せつ支援、見守り、入浴支援などで利用するものに制限されていますが、コロナ禍の影響も受けて、2020年度補正予算で拡充されています。

ほかにも、独立行政法人福祉医療機構による無担保貸付や日本政策金融公庫による低利融資など、介護ロボット導入に対する金融支援も用意されています。

試験運用や助成金・補助金の活用で進む介護ロボットの導入

なかなか普及が進まない介護ロボットですが、それでも国や企業は積極的な情報発信を続けています。厚生労働省では、介護現場とロボット開発現場でのミスマッチを防ぐために、「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業 」を実施。開発の早い段階から介護現場で実証実験を行い、介護ロボットの実用化を促す環境を整備する取り組みを行っています。また、定期的に「介護ロボット地域フォーラム 」を実施し、全国で介護ロボットの体験展示を行うなど、地道な普及活動も行っています。

少子高齢化を防ぐことはもはや難しく、そのなかで介護業界の人手不足を解消していくには、介護ロボットの活用が欠かせません。特にコロナ禍において、通常以上にストレスを抱えてしまっている介護職員の負担を少しでも軽減するために、介護ロボットは大きな役割を果たすでしょう。

導入予算がないという課題は容易に解決するものではありませんが、国や地方自治体からの助成金や補助金を活用することで、コスト削減することも可能です。また、介護ロボット地域フォーラムでは体験展示も行われています。まずは体験し、その効果を実感してから、導入へ向けての検討をしてはいかがでしょうか。

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本記事は2021年07月30日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもとに安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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