介護予防運動指導員って、どんな仕事なの?
世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進む日本。2017年4月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(平成29年推計) 」によると、高齢化率は2015年の26.6%から2065年には38.4%に上昇すると予測されています。少子高齢化が続けば日本の生産年齢人口は減少しますから、今以上に介護職の人手不足感は大きくなるかもしれません。そうした事態を緩和するには、高齢者が他者から介護されることなく健康的な生活を送ることです。その鍵を握ると着目されているのが介護予防運動指導員です。
介護予防運動指導員 は、高齢者が自立した生活を送れるよう、運動面から介護予防を支援する専門家です。「要介護状態になることを防ぐ・遅らせる」「要介護状態を改善させる」ことを目指し、介護予防プログラムを立案し、利用者一人ひとりに合わせた筋力向上トレーニングや軽い運動、転倒防止などを指導します。健康を維持するための栄養指導を行うこともあります。身体面だけではなく、メンタルサポートも重要な役割の一つです。必要があれば、医療、保健、福祉などの専門家と連携を取り、高齢者の健康をトータルでサポートします。
介護予防運動指導員の資格はどうやって取得する?
介護予防運動指導員は、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所が作成した養成講習を受講のうえ、修了試験に合格すると認定されます。養成講習は、東京都健康長寿医療センターが指定した事業者が実施します。なお、指定事業者には全国展開するフィットネスクラブや専門学校、資格取得スクールなどがありますので、お住まいの近くで探すこともできるでしょう(2021年4月現在。指定事業者は変動する可能性があるため、詳しくは東京都健康長寿医療センター研究所のWebサイトでご確認ください。また、講習会の開催場所・開催時間・受講料などは、各事業者にお問い合わせください)。
講習内容 は次のように全23講座、合計31.5時間です。また、1/3程度は実習です。スクールの多くでは、これら講習を4~5回に分けて実施していますから、週1回の受講ならば受講期間は1〜1.5ヶ月程度となります。なお、スクールによっては集中講義を開催しているところもあります。その場合は、短期間で修了することができるでしょう。なお、受講費用は7~10万円とスクールによって異なります。
1 老年学(0.75時間)
2 介護予防概論(0.75時間)
3 地域づくりによる介護予防論(0.75時間)
4 高齢者の社会参加と介護予防(0.75時間)
5 介護予防・日常生活支援総合事業と介護予防コーディネーション(0.75時間)
6 行動科学特論(0.75時間)
7 介護予防評価学特論・実習(各1.5時間)
8 介護予防統計学(1.5時間)
9 リスクマネジメント(1.5時間)
10 高齢者筋力向上トレーニング特論・実習(特論1.5時間、実習4.5時間)
11 転倒予防特論・実習(各1.5時間)
12 尿失禁予防特論・実習(各1.5時間)
13 高齢者栄養改善活動特論(1.5時間)
14 口腔機能向上特論・実習(各1.5時間)
15 フレイル・サルコペニア予防特論(0.75時間)
16 認知症予防特論・実習(各1.5時間)
17 うつ・孤立・閉じこもり予防特論(0.75時間)
どんな人が養成講習を受けられるの?
介護予防運動指導員の養成講習は、誰でも受けられるわけではありません。受講するには、次に示す介護・福祉関連や医療関係の資格を有している必要があります。
・実務経験2年以上の介護職員初任者研修修了者あるいは訪問介護員2級修了者
・実務者研修修了者あるいは介護職員基礎研修課程修了者
・介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、健康運動指導士の資格所有者
・医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、精神保健福祉士、歯科衛生士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士などの国家資格所有者、またはそれら養成校等の卒業見込みかつ資格取得見込みがある者(国家試験受験者)
介護予防運動指導員の活躍の場は?
活躍の場として代表的なのは、デイサービスや有料老人ホーム、地域包括支援センターなどです。これら高齢者介護施設の多くでは、利用者の介護予防のために軽いストレッチやラジオ体操などをプログラムのひとつとして取り入れています。介護予防運動指導員は、体の仕組みや高齢者に適した体の動かし方など専門的な知識を持っていますから、こうした運動系レクリエーションを効果的に行うことができるのです。
また、スポーツクラブやフィットネスクラブでも、介護予防運動指導員の需要は高くなっています。なぜなら、近年ではスポーツクラブやフィットネスクラブでもシニア向け健康プログラムを提供したり、介護施設向けに介護予防プログラムを提供したりしているからです。
自治体でも、市民センターや学校の体育館などを会場に、介護予防の講習会や健康プログラムを定期的に開催しています。介護予防運動指導員の資格があれば、そうしたイベントで講師として活躍する機会もあるかもしれません。
介護予防運動指導員は、養成講習で医療と介護両面の知識と実技を学びます。そこで得た知識とノウハウは、現在の仕事の幅を広げ、強みとなります。たとえば、介護職員初任者研修修了者や実務者研修修了者、介護福祉士ならば、レクリエーション担当を任されるようになるということもあるでしょう。
顧客に高齢者が多いあん摩マッサージ指圧師やはり師、きゅう師、柔道整復師などとして働いている方にもおすすめです。介護予防運動指導員の資格を取得すれば、これまでの施術に加え、介護予防的な側面から利用者をサポートできるようになるでしょう。個人で開業する際にも有利に働きます。
介護予防運動指導員の登録期間は3年間
介護予防運動指導員の登録期間は3年間です。更新するには、3,100円の更新料が必要となります。
また、「高齢者向けのマシンを使わない筋力強化プログラム」「認知機能向上と認知症予防のための運動プログラム」「イスに座ったまま実施する虚弱高齢者向け体操指導」など、スキルアップのためのフォローアップ研修も実施されています。
さらなるキャリアップを目指すのならば、介護予防運動指導員を育成する介護予防主任運動指導員も視野に入れることをおすすめします。ただし、介護予防主任運動指導員の養成講習は東京都健康長寿医療センター研究所のみでしか受講できませんし、受講要件も介護予防運動指導員よりも厳しくなります。
まずは、介護職員初任者研修を受けてみよう
介護・福祉の現場で、高齢者が介護予防し、自宅で健康で自立した生活を送れるように支援したいという方はぜひ、介護予防運動指導員の資格取得を目指してみることをおすすめします。そのためにも、まず介護職員初任者研修を受講し、介護・福祉の経験を積んでみてはいかがでしょうか。
介護現場で役立つ資格・研修の種類まとめ!取得方法やメリット・難易度についても解説
https://gooschool.jp/magazine/g018/c0321/contents-859/団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本が超高齢化社会になる「2025年問題」。そんな超高齢化社会を目前に、介護サービスへのニーズの高まりも手伝って、介護業界へチャレンジする方、すでに介護業界で活躍されていてスキルアップ・キャリアップをお考えの方をはじめ、ご家族に介護が必要になったときのために正しい知識を身につけておきたいなどの理由から、介護資格の取得を検討する方が増えてきています。この記事では介護資格・研修の種類や取得メリット、資格試験があるものは難易度や合格率もあわせて紹介します。
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