社会的弱者をサポートする国家資格、社会福祉士とは
社会福祉士は法に定められた国家資格で、次のように定義されています。
――社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第四十七条において「福祉サービス関係者等」という。)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第七条及び第四十七条の二において「相談援助」という。)を業とする者をいう。(社会福祉士及び介護福祉士法より)
その社会福祉士として仕事をするには、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施する社会福祉士試験(国家試験)に合格し、社会福祉士登録簿に登録する必要があります。
2021年から新たな養成カリキュラムが適用される
厚生労働省が2018年3月に出した報告書「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」 では、「社会経済状況の変化によるニーズの多様化・複雑化に伴い、既存の制度では対応が難しい様々な課題が顕在化してきている」との危機感が示されました。ソーシャルワークの機能を発揮し、多分野・他職種連携による地域課題の解決、社会資源の開発など、社会福祉士には従来よりも幅広い役割が求められるようになったのです。
しかしながら、包括的な相談支援体制を構築し、新たな福祉ニーズに対応していくには、従来の養成カリキュラムでは十分とは言えません。そこで、養成カリキュラムの内容や実習・演習を充実させるという見直しが図られることになりました。その新たな養成カリキュラムは今年度から導入され、2024年度からは国家試験の問題にも反映される予定です。
養成カリキュラムの大きな変更点は、実習の時間数が180時間から240時間(科目名も「ソーシャルワーク実習」に変更)に拡大し、さらに2カ所以上の施設での実習が必須となることです。また、実習する施設の範囲も拡充されます。ただし、介護福祉士、精神保健福祉士の資格保有者は60時間を上限に実習が免除されます。
ソーシャル機能を学ぶ演習も変更となります。従来では1科目150時間でしたが、新カリキュラムでは精神保健福祉士との共通科目で基礎的な内容の「ソーシャルワーク演習」(30時間)と、社会福祉士として専門的に学ぶ「ソーシャルワーク演習(専門)」(120時間)の2つに分かれます。
内容の変更では、「地域福祉と包括的支援体制」と「刑事司法と福祉」が新たに創設されました。「地域福祉と包括的支援体制」は、旧カリキュラムの「地域福祉の理論と方法」と旧カリキュラムの「福祉行財政と福祉計画」をベースにした科目で、複数機関と連携しての包括的な相談支援体制の仕組みを学びます。「刑事司法と福祉」は、旧カリキュラムの「更生保護制度」をベースに司法と福祉の連携に関する内容となっています。時間数は拡大されましたが、精神保健福祉士との共通科目です。
また、従来は複数の科目から1科目を履修していましたが、新カリキュラムではすべての科目の履修が必修です。一方で、社会福祉士と精神保健福祉士は職域が重複することから、共通科目・時間数を拡充することで、両方の資格取得を目指す人の負担軽減が図られています。
こうした新たなカリキュラムは、ソーシャルワーク機能の実践能力向上につなげる狙いがあります。
社会福祉士の受験資格を取得する8つのルート
社会福祉士の受験資格を得るには、主に次の8つのルートがあります。それぞれのルートについて見ていきましょう。
(1)福祉系大学(4年制)ルート:
・指定科目履修
・基礎科目履修+短期養成施設等(6ヵ月以上)
(2)3年制福祉系短大ルート:
・指定科目履修+相談援助実務1年
・基礎科目履修+相談援助実務1年+短期養成施設等(6ヵ月以上)
(3)2年制福祉系短大ルート:
・指定科目履修+相談援助実務2年
・基礎科目履修+相談援助実務2年+短期養成施設等(6ヵ月以上)
(4)一般大学(4年制)ルート:一般養成施設等(1年以上)
(5)3年制短大ルート:相談援助実務1年+一般養成施設等(1年以上)
(6)2年制短大ルート:相談援助実務2年+一般養成施設等(1年以上)
(7)社会福祉主事養成機関ルート:相談援助実務2年+短期養成施設等(6ヵ月以上)
(8)実務経験ルート:
・児童福祉士、身体障害者福祉士、査察指導員、知的障害者福祉士、老人福祉指導主事としての実務経験4年以上+短期養成施設等(6ヵ月以上)
・相談援助実務4年以上+一般養成施設等(1年以上)
なお、相談援助実務 の実務経験として認められる職種は以下の4分野に分類されます。
(1)児童分野(保育士、児童福祉司、児童相談所の電話相談員など)
(2)高齢者分野(生活相談員、介護支援専門員、相談指導員など)
(3)障害者分野(身体障害者福祉司、心理判定員、職能判定員、ケースワーカーなど)
(4)その他の分野(精神保健福祉士、精神科ソーシャルワーカー、医療ソーシャルワーカー、生活相談員、相談支援員など)
社会福祉士国家試験の概要
社会福祉士国家試験の概要は次の通りです。
■試験科目(18科目):多肢選択形式、1問1点の150点満点、総試験時間数240分
なお、新たな養成カリキュラムが導入される2024年度まで、試験科目は現行通りとなります。
・午前(135分)
(1)人体の構造と機能及び疾病
(2)心理学理論と心理的支援
(3)社会理論と社会システム
(4)現代社会と福祉
(5)地域福祉の理論と方法
(6)福祉行財政と福祉計画
(7)社会保障
(8)障害者に対する支援と障害者自立支援制度
(9)低所得者に対する支援と生活保護制度
(10)保健医療サービス
(11)権利擁護と成年後見制度
・午後(105分)
(12)社会調査の基礎
(13)相談援助の基盤と専門職
(14)相談援助の理論と方法
(15)福祉サービスの組織と経営
(16)高齢者に対する支援と介護保険制度
(17)児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
(18)就労支援サービス、更生保護制度
※試験時間は、午前・午後とも、弱視等受験者が1.3倍、点字等受験者が1.5倍となります。
■試験地(24試験地)
北海道、青森県、岩手県、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、鹿児島県、沖縄県
■試験実施回数
年1回
■受験料
社会福祉士のみ受験:19,370円
社会福祉士と精神保健福祉士の同時受験:36,360円
社会福祉士の共通科目免除による受験:16,230円
■合格基準
問題の総得点の60%程度を基準として問題の難易度で補正した点数以上、かつ試験科目18科目群すべてにおいて得点があることです。
■合格率
第33回(2021年)は35,287人が受験し、10,333人が合格、合格率は29.3%で した。社会福祉士試験の合格率は概ね30%弱を推移しており、狭き門となっています。
合格者の内訳は、女性が67.2%と過半数を占めています。年齢別では30歳以下が47.6%と半数近くを占めていますが、30代17.5%、40代20.8%、50代11.3%、60歳以上2.8%と、幅広い年代の方が社会福祉士試験に合格し、新たなキャリアにチャレンジしています。
社会福祉士のお仕事ってどんなもの? お給料はどのくらい?
社会福祉士は、身体および精神に障害のある方、高齢者、生活困窮者、ひとり親の家庭と幅広い方々に相談援助を提供します。そのため就職先も、地域包括支援センターや特別養護老人ホームなどの高齢者用介護施設、知的障害者施設や身体障がい者施設などの障がい用自立支援施設、児童自立支援施設や母子生活支援施設など子どもや母親を支援する施設、病院や保健所などの医療機関、児童相談所や福祉事務所といった行政機関など多岐に渡ります。
社会福祉士の就労状況を調査した「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査」 によると、就労先のトップ3は高齢者福祉関係(39.3%)、障がい者福祉関係(17.6%)、医療関係(15.1%)、職種・職位のトップ3は相談員(13.3%)、介護支援専門員(11.4%)、医療ソーシャルワーカー(10.0%)でした。支援が必要な高齢者の増加とともに、社会福祉士の就労先も高齢者福祉関係が高くなる傾向があるようです。
気になる社会福祉士のお給料ですが、男性平均年収が473万円、女性平均年収が365万円、全体平均年収は403万円です。なお、社会福祉士は正規職員の割合が8割以上です。そこで、正規職員の平均年収分布もチェックしてみました。最も多いのが300万円以上400万円未満の25.9%、400万円以上500万円未満の23.3%、600万円以上の13.7%、500万円以上600万円未満の12.6%と続きます。
社会福祉士のキャリアプランはどうなっている?
「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査」 によると、社会福祉士の資格保有者の78.5%が、同じく国家資格である精神保健福祉士や介護福祉士、介護支援専門員など、複数の資格を持っています。介護福祉士や介護支援専門員の資格を持っている人が多いのは、おそらく高齢者介護から介護・福祉業界に入り、社会福祉士の資格を取得したからだと思われます。一方、精神保健福祉士は社会福祉士との共通科目の受験免除を受けられること、実習時間数の軽減があるからかもしれません。
社会福祉士としてある程度のキャリアを積んだ後は、独立型社会福祉士として開業するもよし、特別養護老人ホームの施設長といった管理職を目指すといったルートも考えられます。管理職への昇格は難しいと思うかもしれませんが、「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査」 によると施設長・事務所管理者は9.9%。管理職になれば現場職員とは違った難しさがあるものの、給与アップも見込めます。長年介護業界で活躍してきて、さらなるキャリアアップを考えているのならば、社会福祉士の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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