介護福祉士実務者研修ってどういうもの? 介護職員初任者研修とはどう違う?

介護福祉士実務者研修ってどういうもの? 介護職員初任者研修とはどう違う?

介護業界では、キャリアアップの手段としてメジャーな資格がいくつかあります。介護福祉士実務者研修もそのひとつで、入門編である介護職員初任者研修の次に位置づけられます。今回は介護福祉士実務者研修について、どのような科目を受講するのか、どのような仕事をするのか、待遇などを見ていきましょう。


介護福祉士実務者研修とは?

介護福祉士実務者研修(以下、「実務者研修」)は、介護関係の資格の中では介護職員初任者研修の次に取得すべき資格です。以前は「ホームヘルパー1級」と「介護職員基礎研修」と呼ばれていた2つの資格を一本化したものです。

実務者研修は、質の高い介護の提供を目標に、基本的な介護提供能力の習得を目的としています。介護職員初任者研修と同様、国家資格ではありませんが、介護業界での就職活動において履歴書に「介護福祉士実務者研修修了」と記載することができますし、それに見合ったお給料も得られます。

介護業界では、資格の有無によって明確に報酬が違ってきます。厚生労働省がまとめた「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 」によると、月給制の常勤介護職員の平均給与額は、無資格者が275,920円、介護職員初任者研修修了者が301,210円、実務者研修修了者が303,230円、介護福祉士が318,150円。このように、保有資格が上がるにしたがってお給料もアップしていきます。

国家資格である介護福祉士を目指すにも、実務者研修の修了は必須です。以前は、介護職員初任者研修しか修了していなくても3年間の実務経験があれば、介護福祉士の受験資格を得られましたが、今は専門学校などで一定の教育課程を経た場合を除き、3年以上の実務経験と介護福祉士実務者研修の修了が要件とされています。

これは、現場経験だけでなく一定の教育課程を経て得た知識や技術が介護福祉士の資質向上に不可欠であるという国の方針によるものです。実務者研修修了者には介護のプロとして、広範な知識や優れた技術の習得が期待されているのです。

介護福祉士実務者研修を修了するには

実務者研修の講座では、20科目のカリキュラムを学びます。受講時間は合計で450時間、修了するまでの期間は半年から1年の長丁場です。受講科目は、座学だけでなく、介護現場での事例をもとに受講生がグループワークを行ったり、医学的処置の習得を目指した演習もあります。そのため、通信教育を受講していても、一部スクーリング(通学)が必要になります。

実務者研修で学ぶ受講科目

・人間と社会
 人間の尊厳と自立 5時間
 社会の理解Ⅰ 5時間
 社会の理解Ⅱ 30時間
・介護
 介護の基本Ⅰ 10時間
 介護の基本Ⅱ 20時間
 コミュニケーション技術 20時間
 生活支援技術Ⅰ 20時間
 生活支援技術Ⅱ 30時間
 介護過程Ⅰ 20時間
 介護過程Ⅱ 25時間
 介護過程Ⅲ 45時間
・こころとからだのしくみ
 発達と老化の理解Ⅰ 10時間
 発達と老化の理解Ⅱ 20時間
 認知症の理解Ⅰ 10時間
 認知症の理解Ⅱ 20時間
 障害の理解Ⅰ 10時間
 障害の理解Ⅱ 20時間
 こころとからだのしくみⅠ 20時間
 こころとからだのしくみⅡ 60時間
・医療的ケア
 医療的ケア 50時間

実務者研修のスクーリング

スクーリングが必要となるのは「介護過程Ⅲ」と「医学的ケア」の2科目。

「介護過程Ⅲ」では、まず座学で介護過程の意義と目的を学びます。それらを理解したうえで、与えられた条件や利用者の情報を基に介護の到達目標を決め、個別支援計画を立案します。次に、グループを作り、各自作成した個別支援計画を第三者の視点から、到達目標の設定の仕方や課題などを受講者同士で話し合い、個別支援計画を完成させます。

最後は実践。実践では、計画はもちろん、介護の手順や方法が適切かどうかについても、講師から細かな指導を受けます。講師から問題点や改善点などのフィードバックを受けることで、個別支援計画の完成を目指すのです。

「医学的ケア」では、たん吸引と経管栄養(胃ろう)という2つの医療的ケアの技術を学びます。受講者同士で役割を交代しながら、1つの実技を繰り返し行うことで、確実に技術を身につけるというわけです。

実務者研修と介護職員初任者研修、違いはどこにある?

介護職員初任者研修との違いは、前述したように、より介護の専門知識や医学的ケアを学ぶことにあります。また、実務者研修では修了後の試験が義務付けられていないことも違う点です。しかし、スクールによっては、スクーリングで得た技術を確認するために、受講後に試験を実施することもあるようです。

実務者研修の受講資格には、特に制限がありません。介護が未経験でも、介護職員初任者研修をスキップして実務者研修から学ぶこともできます(一部のスクールでは、介護職員初任者研修修了を必須としている場合もある)。スクールの費用や受講時間を最小限にしたいという方は、実務者研修からの受講を検討してもいいかもしれません。

ただし、介護職員初任者研修や旧ホームヘルパー、介護職員基礎研修の修了者は、重複している一部の科目が免除されます。免除される時間数は、介護職員初任者研修の修了者が130時間、介護職員基礎研修の修了者が400時間、旧ホームヘルパー1級取得者が355時間、旧ホームヘルパー2級取得者が130時間、旧ホームヘルパー1級取得者が355時間、旧ホームヘルパー3級取得者が30時間です。受講時間数が異なることから、受講料も保有資格によって異なることが多いようです。

介護福祉士実務者研修の修了者は、どんな職場で活躍できるの?

高度な介護知識と技術を学ぶ実務者研修を修了すると、どの介護施設・事業者でも引く手あまたです。なかでも活躍できるのが訪問介護事業所です。なぜなら、訪問介護事業所には、サービス提供責任者を「利用者の数が40人又はその端数を増すごとに1人以上の者を配置する」という配置基準があり、実務者研修を修了すると、そのサービス提供責任者となれるからです。

サービス提供責任者の主な業務は、ケアマネージャーの立てたケアプランに沿って訪問介護計画書を作成し、計画に沿った介護サービスを提供するために現場のヘルパーとの連絡や調整を行うこと。この業務内容からわかるように、サービス提供責任者は現場の介護よりも管理がメインとなります。また、利用者やその家族からの相談に乗ったり、ヘルパーの管理を行ったりもします。そのため、業務内容的には通常のホームヘルパーよりも難しい面もありますが、その分お給料は高くなります。しかも、サービス提供責任者の求人は、正社員がほとんどです。非正規からステップアップしたい方や正社員として働きたい方などは、実務者研修を受講するとよいでしょう。

また、たん吸引や経管栄養といった医学的処置も学ぶことから、医療的ケアや看取りなどを行うことが多い老健や特養などでも歓迎されるようです。さらに、認知症についても時間をかけて学んでいるので、グループホームでも活躍できるでしょう。もちろん、デイサービスなどでも介護知識を身につけたプロとして、リーダー的な活躍が期待されています。

実務者研修修了で、介護業界でキャリアアップ

実務者研修は、介護のプロとしての能力をアップさせるための研修です。修了すれば、介護職員初任者研修よりも介護知識も技術も確実にレベルアップします。また、サービス提供責任者として管理側に回ることもできますし、現場のヘルパーとしてもリーダー的な役割が期待されます。正社員としての求人も多く、資格手当がつくこともあるので、修了までの努力を収入に反映することができます。

特に、専門学校などでの教育課程を経ずに、現場で経験を積みながら国家資格である介護福祉士を目指す場合、実務者研修の修了は必須です。介護業界のキャリアでは重要なステップとして位置づけられる実務者研修。介護業界でキャリアアップを狙う方は、実務者研修を修了することをお勧めします。

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本記事は2021年06月18日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもとに安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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