福祉用具専門相談員になるには? 資格の取得方法、取得後の仕事内容、就職先をご紹介

福祉用具専門相談員になるには? 資格の取得方法、取得後の仕事内容、就職先をご紹介

福祉や介護の仕事というと、介護福祉士やケアマネージャーなどを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、それ以外にも福祉や介護のお仕事はたくさんあります。福祉用具専門相談員もそのひとつ。要介護の利用者に対して福祉用具の相談に乗り、その人に適した福祉用具を提案するというお仕事です。そこで、今回は福祉用具専門相談員とはどういった仕事なのか、資格は必要なのか、仕事内容や就職先などについてお伝えします。


福祉用具専門相談員って、どんな仕事?

福祉用具専門相談員とは、介護を必要とする人や1人で日常生活を送るのが困難な人を支援する専門職です。具体的には、「介護が必要な人が抱える課題を解決するための福祉用具にはどういったものがあるか」「どういった福祉用具が適しているか」「どうやって使うのか」など利用者の希望を確認して適切な福祉用具を選定します。

介護保険上、福祉用具は原則レンタルとなります。レンタルできる福祉用具は、車いす、特殊寝台、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置の11種類。ただし、入浴用いすなど他人が使った用具を使うには心理的抵抗がある用具については、例外として年間10万円を限度として購入できます。例外となる用具は、腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部、入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分の5種類です。

このように、介護保険が利用できる福祉用具の種類は少ないですが、市場に出回っている製品は多様です。たとえば、車いすの場合、自分で動かす自走式車いすもあれば、介助者が操作する介助用車いす、身体の状況に合わせて細かく調整できるモジュラー型車いす、自力で座れない人のために姿勢保持機能がついた車いす、自律走行する自動運転車いすなど、さまざまな製品が販売されているのです。

一般的に、福祉用品は必要に迫られて用意します。しかし、たくさんある製品から、その人の状態にあった製品を選ぶには大変です。そうしたときに頼りになるのが福祉用具専門相談員です。利用者とその家族から要望を聞き取り、担当ケアマネージャーと連携して利用者に適した福祉用具を選ぶ、福祉に欠かせない仕事なのです。

福祉用具専門相談員に資格取得は必要?

福祉用具専門相談員は国家資格ではありませんが、誰もがなれるわけではありません。福祉用具専門相談員指定講習を受講したうえで、修了試験に合格する必要があります。ただし、次の資格をすでに持っている場合、その資格をもって、福祉用具専門相談員の仕事も行えます。

・介護福祉士
・社会福祉士
・保健師
・看護師、准看護師
・理学療法士
・作業療法士
・義肢装具士

なお、2015年の介護保険制度の改定により、介護職員初任者研修や介護職員基礎研修課程、ホームヘルパー1~2級の修了者については、福祉用具専門相談員としての仕事はできなくなっています。

福祉用具専門相談員指定講習では、どんなことを学ぶの?

では、福祉用具専門相談員になるための講座ではどういったことを学ぶのでしょう。指定講習は、総計50時間。受講に制限はありませんので、誰でも受講できます。そして、修了試験に合格すれば、福祉用具専門相談員の資格を得られます。ここでは、全国福祉用具専門相談員協会で規定されている指定講習の概要をまとめてご紹介します。

1 福祉用具と福祉用具専門相談員の役割

利用者の日常の暮らしを支えるうえで欠かせない福祉用具とはどういったものか、そのなかで福祉用具専門相談員の役割とは何かを学びます。
・福祉用具の役割(1時間)
・福祉用具専門相談員の役割と職業倫理(1時間)

2 介護保険制度等に関する基礎知識

介護保険制度の目的や仕組み、そして福祉用具専門相談員が介護サービスを提供するうえで基本となる視点を学びます。
・介護保険制度等の考え方と仕組み(2時間)
・介護サービスにおける視点(2時間)

3 高齢者と介護・医療に関する基礎知識

高齢者介護の基礎知識、日常生活のなかで介護や医療を行う際の注意点や、リハビリテーションと福祉用具の関係性について学びます。また、高齢者が住む住環境の整備に関する考え方や福祉用具を用いた介護技術の理解についても学びます。
・からだとこころの理解(6時間)
・リハビリテーション(2時間)
・高齢者の日常生活の理解(2時間)
・介護技術(4時間)
・住環境と住宅改修(2時間)

4 個別の福祉用具に関する知識・技術

さまざまな福祉用具の種類・機能・構造などの理解、高齢者の状態に応じた福祉用具の選定方法や活用方法を学びます。
・福祉用具の特徴(8時間)
・福祉用具の活用(8時間)

5 福祉用具に係るサービスの仕組みと利用の支援に関する知識

福祉用具がどういった流れで供給されるのか、その仕組みや福祉用具による支援の手順、福祉用具貸与計画の位置付けの理解、モニタリングの意義と方法などを学びます。
・福祉用具の供給の仕組み(2時間)
・福祉用具貸与計画等の意義と活用(5時間)

6 福祉用具の利用の支援に関する総合演習

さまざまな事例を通じ、福祉用具を用いて行う支援の具体的なイメージを修得します。また、福祉用具貸与計画の基本的な作成・活用技術の修得を学びます。
・福祉用具による支援の手順と福祉用具貸与計画等の作成(5時間)

福祉用具専門相談員はどんな仕事をするの?

福祉用具専門相談員の仕事は、大きく次の4つあります。

■福祉用具の選定
担当ケアマネージャーと連携し、福祉用具を必要としている利用者の健康状態や生活環境を確認、その利用者に適した福祉用具を選定します。

■利用計画書の作成
相談内容に基づいて、選定した福祉用具の利用計画(福祉用具サービス計画)を作成します。

■福祉用具適合の確認と扱い方の説明
利用者の身体状況、利用する環境に適合するように福祉用具を微調整します。また、利用者やその家族に福祉用具の扱い方を説明します。

■定期的なモニタリング
一定の期間を置いて、福祉用具の使用状況をモニタリングします。また、利用者の身体状況や使用環境に適合しなくなった場合には、別の福祉用具への交換などを提案します。

福祉用具専門相談員の就職先はどんなところ?

最も多い就職先は福祉用具貸与・販売事業所です。福祉用具の貸与や販売を行っている事業所では、介護保険法により、福祉用具専門相談員を2名以上配置しなければならないからです。また、福祉用具は訪問介護事務所やスーパー、ホームセンター、百貨店、ドラッグストアなどでも取り扱っていますから、それらも就職先となります。

前述した講座内容に「住環境と住宅改修」があるように、福祉用具専門相談員は住環境に関する専門知識を持っています。それを活かせるのがリフォーム業者や工務店です。それらでも、福祉用具専門相談員の知識と経験を活かせます。

被介護者や高齢者の生活をサポートするうえで欠かせない福祉用具専門相談員

福祉用具専門相談員は、介護職のなかでは誰もが知っているといった仕事ではありません。しかし、ほかの介護職同様なくてはならない仕事です。少子高齢化が進む日本においては、今後さらに重要な仕事となっていくでしょう。

また、福祉用具専門相談員の資格に加えて、福祉住環境コーディネーターの資格を取得すれば、リフォームプランや改修工事の提案も可能になり、活躍の場はさらに広がります。福祉や介護の仕事を検討しているのであれば、福祉用具専門相談員も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

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本記事は2021年10月04日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもとに安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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