介護福祉系で唯一の国家資格である「介護福祉士」
介護福祉士は法に定められた国家資格で、次のように定義されています。
――介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰かくたん吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。(社会福祉士及び介護福祉士法)
この介護福祉士になるには、基本的には公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施する介護福祉士試験(国家試験)に合格し、介護福祉士登録簿に登録する必要があります。
介護福祉士の受験資格を取得する3つのルート
現在、介護福祉士の受験資格を得るには、主に次の3つのルートがあります。
(1)養成施設ルート:福祉系大学や福祉系専門学校などの指定養成施設を卒業する。
(2)福祉系高校ルート:福祉系高校で福祉関連の所定の科目・単位を修得して卒業する。または、特例高校で福祉関連の所定の科目・単位を修得して卒業後、9カ月以上(従業期間9ヶ月以上、従事日数135日以上)の実務経験を積む。
(3)実務経験ルート:介護現場や病院などで3年以上(従業期間3年以上、従事日数540日以上)の実務経験があり、かつ介護福祉士実務者研修を修了する。または、介護現場や病院などで3年以上(従業期間3年以上、従事日数540日以上)の実務経験があり、介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修(第1号研修または第2号研修)を修了する。
また、日本の介護業界で働くために来日する外国人向けのルートもあります。
(4)経済連携協定(EPA)により来日し、3年以上(従業期間3年以上、従事日数540日以上)の実務経験を積む。
なお、2017年の社会福祉士及び介護福祉士法の改正前まで、養成施設ルートでは国家試験を受験しなくても介護福祉士の資格を取得できました。しかし、改正によって、養成施設ルートも国家試験の受験資格となりました。そのため、2027年度末以降の卒業生は国家試験に合格しなければ、介護福祉士の資格は取得できません。一方、2026年度末までの卒業生は、国家試験を受験しなくても(合格しなくても)、卒業後5年間継続して介護等の業務に従事すれば、5年経過後も介護福祉士の登録を継続できます。
介護福祉士国家試験の概要
介護福祉士国家試験の概要は次の通りです。
■試験科目
・筆記試験(11科目)1問1点の125点満点、総試験時間数220分
(1)人間の尊厳と自立、介護の基本
(2)人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
(3)社会の理解
(4)生活支援技術
(5)介護過程
(6)発達と老化の理解
(7)認知症の理解
(8)障害の理解
(9)こころとからだのしくみ
(10)医療的ケア
(11)総合問題
・実技試験
介護等に関する専門的技能。ただし、2017年より介護福祉士の受験資格として実務者研修の修了が義務付けられたことから、実務経験ルートでは実技試験は免除され、筆記試験のみとなっています。また、養成施設ルートも実技試験は免除されています。一方、福祉系高校ルートと経済連携協定(EPA)ルートは、受験コースによっては実技試験もあります。
■試験地
・筆記試験(34試験地)
北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、岐阜県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
・実技試験(2試験地)
東京都、大阪府
■試験実施回数
年1回(筆記試験と実技試験は別の日程)
■合格基準
・筆記試験
問題の総得点の60%程度を基準として問題の難易度で補正した点数以上、かつ試験科目11科目群すべてにおいて得点がある。
・実技試験
課題の総得点の60%程度を基準として、課題の難易度で補正した点数以上。
■合格率
第33回(2021年)は、84,483人が受験し、59,975人が合格しました。合格率は71.0% 。介護福祉士試験の合格率は、過去5年70%前後 を推移しており、国家資格の中では受験しやすいものといえます。
介護福祉士の受験対策にはスクール通いが必要か?
上記で説明したように、介護福祉士の資格を取得するには基本的に国家試験を受験して、合格しなくてはなりません。どのルートで受験資格を得るにしても、スクールに通って受験対策講座を受講したほうが合格につながりやすいでしょう。受験対策講座では、勉強の進め方や問題を解くコツを伝授したり、本番を意識した模擬試験などを実施したりしますから、万全な対策のもとで受験日を迎えることができるでしょう。
介護福祉士の受験対策講座には、 だいたい通信講座と通学講座の両方があります。通信講座の場合、受講期間は2~3カ月、受講費用は2~3万円台です。通学の場合、1ヵ月の短期集中から6カ月かけてみっちりと学ぶものまであり、受講費用も5~6万円台と高めに設定されています。
介護の現場で働きながら介護福祉士を目指すのであれば、通信講座のほうが時間の融通がつきやすくて便利かもしれませんね。なかには「資格取得支援制度有り」として、働きながらのキャリアアップを支援している事業所などもあります。
介護福祉士のお仕事ってどんなもの? お給料はどのくらい?
介護福祉士の求人は、病院やデイサービス、老人ホーム、訪問介護事業所など、さまざまな介護・福祉系事業所から出ています。働き方も正規雇用だけでなくパートタイムもありますし、勤務時間も早朝の早番や深夜の夜勤などさまざまです。選択肢が多いので、たとえば子育て中などでフルタイム勤務はできないという方でも、仕事は探しやすいでしょう。未経験者やブランクありでも応募できる求人はたくさんあります。
気になる介護福祉士の平均月給は、常勤で329,250円(「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」 )。給与は居住地や勤務先によって異なりますが、国家資格保有者として介護業界の中では高めに設定されています。
一般的な仕事内容は以下の通りです。
・身体介護(食事、排せつ、入浴の介助、衣服の着脱、衛生管理など)
身体介護は介護福祉士の代表的な仕事です。日常生活に必要な動作が十分に行えない方に対して、身体的なサポートを提供します。
・生活援助(食事の用意、洗濯、買い物の代行など)
在宅介護、訪問介護では、この生活援助の比率が増えています。一見簡単そうな作業に見えますが、家庭によってやり方が違うため、ニーズを見極めながら利用者の希望をくむ理解力が必要です。また、円滑な業務遂行には利用者や家族からの信頼を得ることが欠かせません。
・メンタルケア(話し相手になる、レクレーションを催す、近隣住民との交流など)
利用者のメンタル面でのサポートも、介護福祉士の仕事に含まれます。話し相手になる、レクレーションを催す、近隣住民との交流を図るなど、利用者の心に安らぎを与えます。
・家族の介護をする方へのアドバイス
介護を受ける方やその家族へのアドバイスも、介護のプロである介護福祉士の仕事です。介護の方針の相談にアドバイスしたり、介護用具の取り扱いや自宅で介護をするときのポイントなどを説明します。
・現場のヘルパーに対する指導
現場での経験をもとに、国家資格の有資格者としてチームのリーダー的役割も期待されています。介護施設では、無資格者も介護福祉士の指示の下で身体介護ができるとなっているため、こうしたヘルパーの指導をしなくてはいけません。
介護福祉士の資格取得でキャリアアップ
介護福祉士は唯一の国家資格保有者として、介護の専門知識と技術を身につけ、現場でリーダー的役割を果たすことが期待されています。
介護福祉士の活躍する現場は、介護施設だけでなく、病院やデイサービス、老人ホーム、訪問介護事業所など多岐に渡ります。キャリアアップの道筋としては、介護系の資格者の中で最も給与の高いケアマネージャーを目指すこともできますし、施設長といった管理側になることも考えられます。また、教員免許など他の資格と組み合わせることで福祉系学校で教べんをとるチャンスもあります。
国家資格というと身構えてしまうかもしれませんが、上述したように合格率は7割程度と比較的高めです。介護業界でのキャリアを模索している方は、ぜひ介護福祉士の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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