介護職員初任者研修とは?
介護職員初任者研修は、介護業界に入った人がまず目指すべき資格。平成25年(2013年4月)の介護保険法施行規則の改正に伴い、旧来の「ホームヘルパー2級」から名称が変更されました。130時間の講習で介護の基本的な知識や考え方、コミュニケーション技術、老化、認知症、障がいといった介護に密接にかかわる身体の変化に関する知識を学び、講習修了後の試験に合格すれば晴れて資格取得となります。
試験の合格率は公表されていませんが、講習内容を理解していれば合格可能だと言われており、それほど難しい試験ではないようです。改正で新たに試験が設けられたものの、「ホームヘルパー2級」では必須だった実習が廃止されたことで、仕事や子育てをしながらでも修了しやすくなったかもしれません。
介護職員初任者研修修了者の平均給与は301,210円
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員初任者研修修了者の平均給与は301,210円。これを見ると、それほど悪くないように見えます。しかも、前年よりも実に15,410円(平成31年の調査では285,800円)もアップしています。
ただ、同じ介護職員初任者研修修了者でも、お給料は勤務する職場によっても異なります。同調査結果では、サービス種別の平均給与額で最も高いのは介護老人福祉施設で332,390円。一方、最も低い介護療養型医療施設は262,560円ですから、その差はかなり大きいと言えます。
サービス種別で平均給与額を比較すると、どちらかといえば通所系のほうが低くなる傾向が見られます。実際、通所介護事業所は266,200円、通所リハビリステーション事業所は285,870円と、20万円台にとどまっています。これは、入所系と違い、夜勤などがないからでしょう。
一方、入所系はだいたい30万円台で、介護老人保健施設が316,490円、介護医療院が308,640円、訪問介護事業所が307,410円、特定施設入居者生活介護事業所が317,210円。ただし、小規模多機能型居宅介護事業所(277,520円)や認知症対応型共同生活介護事業所(277,150円)は低めで、通所系と同じ水準です。
このように、同じ資格であっても、職場によってお給料の額にはかなりの差があります。この差は、業務内容や介護保険の介護報酬によって生じます。なお、当然ですが、勤務地や勤続年数によってもお給料には差が出ます。
待遇改善が進み、お給料が上がる介護業界
介護業界は賃金が低い。それがこれまでの介護業界の常識でした。そのため男性介護士などは、結婚や子育てでお金がかかるようになると退職する傾向さえありました。このように低賃金で激務と言われた介護業界ですが、年々、介護職員の待遇改善は進んでいます。
背景にあるのは、政府による介護人材の確保です。日本が世界に先駆けて超高齢化社会に突入するなか、政府は労働力確保に向けて家族の介護を理由に仕事を辞める「介護離職ゼロ」を掲げています。介護離職ゼロを達成するには、介護サービスを専門的に担う人材の確保が不可欠。そこで政府が打ち出したのが、介護職員の給与水準を引き上げる「処遇改善加算」です。
介護職員の勤続年数や資格に応じて昇給させ、一定の基準で定期昇給を実施した事業所には介護報酬を多く支払う仕組みです。この仕組みの導入によって、介護事業所は介護職員のキャリアパスを正しく評価し、それに伴った給与を支払えるようになりました。さらには、長く勤める人材の確保や資格取得によるキャリアアップにもつながるようになったのです。
先ほどの「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」 でも、就職初年度が283,480円であるのに対して勤続20年以上は390,960円と、勤続年数が長くなるほど平均給与は高くなっています。月給390,960円は、年収にすれば469万1,520円。
国税庁の「令和元年度民間給与実態調査」によれば、日本の平均年収は436万円 (平均年齢は46.7歳)。これを見れば、介護業界だけが飛び抜けて安いという状況ではなくなっていることがわかります。賃金面の改善を進めた結果、業界全体で賃金が上がり、働きやすい仕事になっているのです。
介護業界は資格を取得すれば、容易に収入アップできる
介護業界で働くメリットのひとつに、取得した資格によってキャリアパスを描きやすいという点があります。
介護業界は常に人手不足のため、実際のところ無資格でも就職することが可能です。介護施設の事務職員や利用者の送迎をするドライバーなど、資格がなくても務められる業務もあります。また、介護施設であれば、国家資格である介護福祉士の指示のもと、無資格者であっても入所者の食事や入浴、排せつの介助を行う身体介護に携わることもできます。
訪問介護の場合は、基本的に1人で利用者宅を訪問することになるため、介護職員初任者研修以上を修了していることが義務付けられていますが、新型コロナウイルス感染症の流行で人手不足が深刻化した結果、介護の実務経験者であれば、無資格でも訪問介護の仕事に就けるという一時措置もとられています。
このように、無資格でも働くことができる介護業界ですが、入門的資格の介護職員初任者研修であっても、資格を持っているのと持っていないのとでは、給与の額は大きく違います。「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、無資格者の平均給与は275,920円。前述したように、介護職員初任者研修修了者の平均給与は301,210円ですから、その差は月額25,290円、年収換算で30万円以上になります。介護職員初任者研修は介護業界の入門的資格と言われていますが、それを持っているだけでも、収入は大きく違ってくるのです。
もちろん、平均給与は上位の資格であるほど高くなります。初任者研修に次ぐ資格である介護福祉士実務者研修を修了していると303,230円、国家資格である介護福祉士だとさらに上がり329,250円になります。
介護福祉士を取得したあとは、現場のリーダーとしてヘルパーの指導にあたるほか、施設長などの管理職を目指したり、介護計画を立案するケアマネージャー(介護支援専門員)を目指してさらなる資格取得に励んだりしてもいいでしょう。なお、ケアマネージャーは介護系の資格者の中で最も給与が高く、平均給与は368,030円です。
このように、介護業界では初任者研修、実務者研修、介護福祉士と資格を得てキャリアアップが容易です。さらには、ケアマネや施設長を目指すなど、資格に応じて長く働くためのキャリアパスも整備されています。なかには、医療的ケアの知識・技術を身につけるために、介護業界を飛び出して看護師の養成機関に社会人入学し、再度勉強に励む方もいます。
キャリアパスが明確なうえ、給与面などの処遇改善も進んだことで、介護業界は長く働ける職場へと変貌したのです。
資格をとって介護業界で活躍しよう
介護のお仕事に飛び込む動機は人それぞれ。ただ、生活がかかっている以上、やりがいだけでは仕事を続けられないのも事実。つまり、給与は重要な条件なのです。
政府もこうした実情を重く受け止めて、人材の確保に向けて介護業界を長く働ける職場にしようと対策を練っています。「介護=低賃金で激務」という既成イメージを抱いていた方も、最新のデータを見ていくことで考えが変わったのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、介護業界でキャリアや給与をアップさせていくには資格の有無が重要です。そして、保有資格によって給与額が影響されることは、データからも明らか。したがって、介護業界で長く活躍したいのならば、まずは介護職員初任者研修の修了を目指しましょう。その後は現場で実務経験を積みながら、ご自身のライフプランに合わせて上級資格を目指してはいかがでしょうか。
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