介護業界のキャリアパスは、保有する資格に左右される
介護業界のキャリアパスの王道は、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士です。介護福祉士からのキャリアアップは、介護施設の施設長や訪問介護事業所のサービス提供責任者を目指す、あるいはケアマネジャー(介護支援専門員)を目指すなど複数あります。いずれにせよ、資格を取得することでキャリアアップへの道が開けることは間違いありません。
資格は、王道を進むためのものだけでなく、専門性を高めるためのものもあります。専門性を高めるための資格を取得すれば、仕事の幅を広げることができるでしょう。介護の現場にこだわるのなら、基本となる資格に加えて専門性を高める資格の取得を目指すことをおすすめします。
キャリアップを目指すなら、絶対に取っておきたい基本となる介護系の資格
介護業界のキャリアパスの王道を進むために必要な基本的な資格には、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)があります。ここでは、これら絶対に取っておきたい資格について紹介します。
■介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護業界ではファーストステップとされる資格です。2013年4月の制度変更により「ホームヘルパー2級」から名称が変更されました。130時間の講習を受け、講習修了後の筆記試験に合格すれば資格取得となります。ホームヘルパー2級時代には必須だった30時間の実習は必須ではなくなり、スクーリングと試験で資格が取得できるようになったのが大きな変更点です。
介護職員初任者研修のカリキュラムでは、介護という職務の理解、介護される方の尊厳や自立の支援、介護技術、介護におけるコミュニケーション、介護・福祉サービスと医療の連携、老化、認知症、障がいといった介護と密接にかかわる身体の変化について学びます。
講習修了後の筆記試験は選択式と記述式で、合格基準は100点満点中70点以上です。合格率は発表されていませんが、講習内容を理解したかの確認がメインですので、合格率はかなり高いようです。
訪問介護の場合、介護職員初任者研修を修了すると、生活援助だけでなく、食事や入浴、排せつの介助などの身体介護も提供できるようになります。
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」 によると、介護職員初任者研修資格者の平均月給は301,210円。無資格者の平均月給は275,920円なので、初歩的な資格を取得するだけで月に25,000円ほど高い給与をもらえることになります。
■介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修に次ぐ資格です。2013年に、質の高い介護サービスを提供するために必要な介護技術の習得を目的に、かつての「ホームヘルパー1級」と「介護職員基礎研修」が一本化されました。国家資格である介護福祉士を受験するには、介護福祉士実務者研修を修了していることが要件となっています(2017年に義務付けられました)。
介護福祉士実務者研修では、20科目のカリキュラムを合計450時間、半年かけて学びます。ただし、介護職員初任者研修の修了者は11科目320時間、ホームヘルパー2級の取得者は12科目320時間に短縮されますので、その分期間も短くなります。
受講科目の中には介護職員初任者研修と同じものもありますが、介護に関する専門知識をより深く詳しく学びます。また、介護現場での事例をもとに受講生がグループワークを行う「介護過程」、喀痰吸引のケアなどの演習も行う医療的ケアについても学びます。なお、介護職員初任者研修とは異なり、研修修了後の試験は義務付けられていません。
介護福祉士実務者研修を修了すると、訪問介護事業所のサービス提供責任者となれます。サービス提供責任者とは、ケアマネジャーの作成したサービス計画書に沿った訪問介護計画書の作成やホームヘルパーの連絡・調整を行う仕事です。
サービス提供責任者になれば、通常のホームヘルパーよりも収入が高くなります。「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士実務者研修修了者の平均月給は303,230円。訪問介護事業所の場合、平均月給は310,430円と若干高くなります。
■介護福祉士【国家資格】
介護福祉士実務者研修を修了したあとは、国家資格である介護福祉士へのチャレンジが可能になります。介護系の資格の中では唯一の国家資格で、ケアワーカーとも呼ばれる介護のスペシャリストです。上位資格に「認定介護福祉士」がありますが、こちらは一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が認証する民間資格です。
介護福祉士は、法律で「心身の状況に応じた介護等を行う」ことが定められています。要介護者の食事や排せつ、入浴などの介助をするだけでなく、介護の現場で働く介護職員の指導や在宅で要介護者を介護する家族にアドバイスを行います。
国家資格ということもあり、キャリアや待遇は格段によくなります。「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士の平均月給は329,250 円。介護福祉士実務者研修修了者よりも25,000円ほど高くなります。
介護福祉士の資格を取得するには、介護福祉士試験(筆記試験)を受験して合格する必要があります。そして、介護福祉士国家試験の受験資格を得るには3つのルートがあります。1つ目は介護福祉士実務者研修を修了し、3年間の実務経験を積みながら目指すこと。2つ目は福祉系高校を卒業すること、3つ目は福祉系の4年制大学、短大、専門学校などの介護福祉士養成施設を卒業することです。介護福祉士養成施設の卒業生は、2016年度までは国家試験を受けなくても資格を取得できましたが、現在は国家試験を受験しなければなりません(2017~2026年度卒業生は経過措置があります)。
介護福祉士国家試験の合格率は、過去5年間7割前後で推移しており、国家資格の中では比較的合格しやすいと言えるでしょう。
■ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険法に基づいてケアマネジメントを提供する介護保険のスペシャリストで、「ケアマネ」とも呼ばれています。
主な仕事は、サービス計画書(ケアプラン)の作成、要介護認定業務、介護給付費の支給に関連する給付管理業務、利用者のモニタリングと相談、サービス事業者との調整などです。要介護認定業務とは、介護保険サービスを利用するにあたって、どの程度の要介護状態・要支援状態にあるのかを判定することです。ケアマネは市町村からの委託を受け、利用者の自宅を訪問し、心身の状態を確認します。また、サービス計画書とは、要介護認定を受けた介護保険サービスの利用者の介護方針や内容、目標を設定した計画書のことです。
「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、ケアマネの給与は介護系の資格者の中で最も高く、平均月給が368,000円です。
ケアマネになるには、介護支援専門員実務研修受講試験を受験して合格する必要があります。そして、介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格を得るには2つのルートがあります。1つ目は、該当する国家資格を持っており、5年以上かつ900日以上の実務経験があること。2つ目は、生活相談員または相談支援員などとして5年以上かつ900日以上の実務経験があることです。なお、ケアマネは国家資格ではありませんので、介護支援専門員実務研修受講試験も国家試験ではありません。
介護支援専門員実務研修受講試験の合格基準は、各分野の正答率が7割以上です。合格率は2割弱 ですから、かなり難関と言えるでしょう。
専門性を高める介護系の資格
上記で紹介した基本的な資格以外にも、介護に関連する資格はたくさんあります。ただ、そうした資格の多くは単独で取得するのではなく、上記で紹介した基本的な介護職の資格を取得したうえで、さらに専門性を高める意味で取得するとよいでしょう。高度な専門知識を身につけることで、介護職員としてのスキルアップにもつながります。なお、保有する資格によっては、講習時間の免除や講習料の割引などが受けられることがあります。ここでは代表的な3つの資格を紹介します。
■介護予防運動指導員
「要介護状態になることを遅らせる」「要介護状態になることを防ぐ」「要介護状態の高齢者がこれ以上、悪化しないように改善させる」を目的に、高齢者に筋力向上トレーニングや介護予防の運動を指導する専門家の資格です。
■福祉用具専門相談員
福祉用具の利用者やその家族に、福祉用具に関する相談援助する福祉用具のプロフェッショナルです。主な仕事は、福祉用具の利用計画(福祉用具サービス計画)の作成やモニタリングです。
■喀痰吸引等研修
たんの吸引等と経管栄養に関する知識・スキルを身につける研修です。基本研修と実地研修があり、両方を修了する必要があります。基本研修は50時間の講義と演習、実地研修は5項目について指定回数以上の研修を行います。
キャリアアップは5年以上の長期的な展望で計画する
介護業界でのキャリアパスは明確ですから、資格取得も計画的に行いましょう。目安としては、最初の1年目で介護職員初任者研修を、3年目までに介護福祉士実務者研修を、介護福祉士国家試験の受験資格を得られる3年目以降に介護福祉士を、介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格を得られる5年目以降にケアマネの資格取得となります。
ケアマネになるための介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格に実務経験があるように、介護業界は資格と同時に実務経験も重要です。言い換えれば、働きながらキャリアアップが可能ということです。働きながらの資格試験の受験は大変ですが、スクールを活用しながらチャレンジしていきましょう。
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