高齢者介護のお仕事、求人が多いって本当?

高齢者介護のお仕事、求人が多いって本当?

急速に高齢化が進む日本社会において、高齢者の生活をサポートする介護職のお仕事は、需要が高まるばかりです。とはいえ、それが即求人に結びつくとは限りません。そこで、今回は介護職の求人状況がどのようになっているのかについて調べてみました。


介護職は常に人手不足で、他の職業よりも求人が多い

少子高齢化社会の影響で、日本は介護や介助を必要とする高齢者が年々増加する一方で、介護の現場は慢性的な人手不足に陥っています。「令和元年度介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター調査、調査期間は2019年10月1日~31日)によると、介護サービスに従事する従業員の不足感は2015年以降60%を超え、高止まりしています。

また、一般職業紹介状況(厚生労働省)によると、2020年の職業別有効求人倍率の平均値は、全産業平均が1.09倍であるのに対して介護サービスの職業は4.04倍と3倍以上も高くなっています。一般職業紹介状況とは公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめたもので、介護サービスの職業とは介護施設などに勤務する施設介護員や訪問介護員、訪問入浴介助員などを指します。有効求人倍率の高さからも、介護の現場は人手不足であると言えるでしょう。

重要なことは、介護の現場における人手不足は今後も続くだろうということです。厚生労働省は「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」(2018年)において、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に介護職員は55万人不足すると試算しています。つまり、介護職は働き手優位な売り手市場なのです。

介護職の求人状況、新型コロナウイルス感染症の影響は少ない

2020年初頭から世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症は、経済に深刻なダメージを与え、人々のライフスタイルを一変させました。その影響を受けて、企業の中には新規採用を控えるところも出ています。もしかしたら、介護業界でも介護職の求人を減らしていているかもしれません。

そこで、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が、介護職の求人にどのような影響を及ぼしているのかを調べてみました。さきほどの一般職業紹介状況で確認したところ、介護サービスの職業の有効求人倍率は、緊急事態宣言前の2020年1~4月の平均値が4.21倍、緊急事態宣言後の2020年5月~2021年2月の平均値が3.92倍と、わずかですが減少しています。

しかし、依然として高い有効求人倍率を維持していることから、介護職が売り手市場であることは変わりありません。このことから、介護職は景気の動向に左右されにくい、安定した職種であると言えそうです。また、何らかの事情で離職したとしても、有効求人倍率の高さから次の職場を見つけるのも比較的容易だと思われます。

新型コロナウイルス感染症を理由とした離職も少ない

新型コロナウイルス感染症は、多くは軽度な症状ですむようですが、高齢者や持病を持っている人などが感染すると重篤になり、最悪の場合、死亡することもあります。現在はワクチンが開発され、順次接種が行われていますが、全世界にいきわたるまでにはまだまだ時間がかかります。そのため、今はできるだけ人と接触しないことが、最大の感染予防とされています。

しかし、介護職は医療現場ほどではないにせよ、人との接触が発生するお仕事です。入浴介助や食事介助、ベッドや車いすへの移乗といった身体介護はもちろんのこと、調理や掃除、洗濯などの生活援助でもそれなりに接触することになります。職場での感染リスク、逆に感染させてしまうリスクが一般的な事務職などよりも高いことから、介護職を離職する人が増えているかもしれません。

ところが、実際には新型コロナウイルス感染症の感染リスクを理由にした離職はそれほど多くないようです。「新型コロナウイルス感染症禍における介護事業所の実態調査(中間報告)」(公益財団法人介護労働安定センターが2021年2月8日発表、調査期間は2020年12月7日~2021年1月6日)によると、新型コロナウイルス感染症の影響による離職者がいた事業者は64で、割合としてはわずか5.2%でした。離職者数も、「1人」が65.6%、「2人」が21.9%と、約9割が2人以下です。このことから、離職に関して言えば、新型コロナウイルス感染症の影響はさほど大きくないと思われます。

介護業界は、資格があればより有利な条件で働ける

売り手市場の介護職は、無資格や未経験でも容易に就職できます。求人情報では、介護職員初任者研修や介護福祉士などの資格を持っている人への求人はもちろんですが、「無資格・未経験歓迎」を謳う求人もたくさんあるからです。

しかし、資格を持っていれば、より有利な条件で仕事を見つけることができます。求人情報を見ると、無資格よりも、介護職員初任者研修や介護福祉士などの資格を持っている人のほうが、明らかに給与が高くなっているからです。たとえば、無資格の人の時給が1,200円だとすると、介護福祉士は1,500円といった具合です(この例は都心部の場合で、時給は所在地によって異なります)。また、資格取得によって時給がアップしたり、正職員に切り替えられたりと、待遇面もよくなります。どの業界でも有資格者は即戦力として期待され、給与や労働条件が優遇されるものですが、介護業界では資格によるキャリアパスが明確であることから、こうした傾向は特に顕著と言えるでしょう。

本気で介護職に就きたいのであれば、資格所得は必須です

介護職の需要は高まり続けており、未経験・無資格からでも挑戦でき、しかもキャリアアップも目指せます。このことから、今後転職や就職を考えている方にとって、有益な選択肢のひとつと言えます。低賃金や重労働など根深い課題はあるものの、介護職員の処遇改善のための施策も打ち出され、少しずつ改善されてきています。もちろん、介護職はやる気、使命感、やりがいだけで続けていける仕事ではありません。しかし、その手によって救われる高齢者や要介護者が多い事実が変わることはありません。

特に新型コロナウイルス感染症の終息が見えない今、しっかりとした介護の知識を持っていなければ、介護者はもちろん、要介護者の心身の健康にも悪影響を与えかねません。本気で介護職に就こうと考えているのであれば、介護サービスに対する知識やノウハウを身につけるころは必須と言えるでしょう。まずは、介護職員初任者研修の受講からはじめてみませんか。

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本記事は2021年04月07日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもとに安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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