福祉住環境コーディネーターが求められる背景
福祉住環境コーディネーターは、東京商工会議所が認定する資格です。1999年5月から始まりました。この資格が求められる背景の一つとして、家庭内で発生する事故が多いことが挙げられます。内閣府が発表した「平成29年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者が事故に遭う場所として最も多いのは家庭内(77.1%)。しかも、家庭内事故は高齢者に限った話でなく、20歳以上65歳未満でも71.4%という高い数字が出ています。これは、家庭内での事故は年齢に関係なく起こるということを示しています。
家庭内での事故の原因として、必ずしも住環境に問題があるとは限りません。しかし、事故が起きた場所を介護・福祉的な観点から見ると、事故が起きても仕方ないというケースが少なからずあります。また、高齢になり身体の動きが不自由になれば、それまでは問題なく過ごせた家でも支障が出てきます。しかしそれらには、たとえば段差をなくしたり、手すりをつけたりというようなリフォームで解決できることもたくさんあります。
つまり、家庭内の事故を減らし、高齢者や障がい者を含むすべての人が安全に過ごしていくには、それに適した住環境が必要だということです。そして、その住環境を実現するには、医療・福祉の知識はもちろんのこと、その住環境を実現する建築の知識が必要となります。それこそ、福祉住環境コーディネーターが注目を集めている理由です。
福祉住環境コーディネーター2級・1級は、介護支援専門員(ケアマネジャー)や福祉用具専門相談員といった介護・福祉の専門家同様、介護保険に基づく住宅改修費の支給申請の書類作成をすることができます(自治体によって対応は異なります)。その点でも重要な存在なのです。
福祉住環境コーディネーターの資格を取得しよう
福祉住環境コーディネーターの資格を取得するには、検定試験に合格する必要があります。検定試験は1級~3級まであります。3級は入門的なレベルで、難易度はそれほど高くありません。受験者も学生が過半数を占めています。一方、2級は実務で通用するレベルで、受験者にも医療業(13.8%)、専門学校生・短期大学生(13.7%)、建設業(10.5%)と、社会人の占める割合が多くなります。そして、最上級の1級は合格率も低く、極めて難関な資格です。
それぞれの受験資格、受験日、受験料、合格率は次の通りです。
受験資格
2級、3級:試験当日に日本国内に居住している者
1級:2級合格者
受験日(2021年度の場合)
2級、3級:年2回(IBT:7~8月、11月~12月、CBT:9月、1~2月)
1級:年1回(12月)
受験料(2021年度の場合)
3級:5,500円(税込)
2級:7,700円(税込)
1級:12,100円(税込)
受験方法
2級、3級:IBT(Internet Based Test・インターネット経由での試験)、CBT(共通会場での受験)
※CBTは2021年度~2023年度のみ実施。ただし、場合によっては見直しする可能性がある。
1級:指定された会場での受験
持ち物
持ち物
2級、3級:身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど、第三者機関発行で原則として氏名、生年月日、顔写真が揃って確認できるもの。ただし電子媒体やコピーは不可)
1級:受験票、筆記用具、身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど、第三者機関発行で原則として氏名、生年月日、顔写真が揃って確認できるもの。ただし電子媒体やコピーは不可)
合格率(2020年度の年平均)
3級:66.8%
2級:46.8%
1級:12.8%
福祉住環境コーディネーターの試験範囲と合格基準
福祉住環境コーディネーター(1~3級)の検定試験範囲、試験方法、合格基準は次の通りです。
3級の試験範囲(多肢選択式・90分、100点満点中70点以上で合格)
1. 少子高齢社会と共生社会への道
2. 福祉住環境整備の重要性・必要性
3. 在宅生活の維持とケアサービス
4. 高齢者の健康と自立
5. 障害者が生活の不自由を克服する道
6. バリアフリーとユニバーサルデザインを考える
7. 生活を支えるさまざまな用具
8. 住まいの整備のための基本技術
9. 生活行為別に見る安全・安心・快適な住まい
10. ライフスタイルの多様化と住まい
11. 安心できる住生活
12. 安心して暮らせるまちづくり
2級の試験内容(多肢選択式・90分、100点満点中70点以上で合格)
1. 高齢者・障害者を取り巻く社会状況と住環境
2. 福祉住環境コーディネーターの役割と機能
3. 障害のとらえ方
4. リハビリテーションと自立支援
5. 高齢者・障害者の心身の特性
6. 在宅介護での自立支援のあり方
7. 高齢者に多い疾患別にみた福祉住環境整備
8. 障害別にみた福祉住環境整備
9. 福祉住環境整備とケアマネジメント
10. 福祉住環境整備の進め方
11. 福祉住環境整備関連職への理解と連携
12. 相談援助の実践的な進め方
13. 福祉住環境整備の共通基本技術
14. 生活行為別福祉住環境整備の手法
15. 福祉住環境整備の実践に必要な基礎知識
16. 福祉用具の意味と適用
17. 生活行為別にみた福祉用具の活用
1級の試験内容(前半:マークシート方式・2時間、後半:記述式・2時間、各70点以上で合格)
1. これからの社会に求められる福祉住環境整備
2. 福祉住環境コーディネーター1級の目標と役割
3. 地域福祉の推進-福祉コミュニティづくり-
4. 地域で支える高齢者ケア
5. 地域で支える障害者ケア
6. ユニバーサルデザインの概念および沿革
7. ユニバーサルデザイン環境の整備手法
8. 高齢者・要介護者向け住宅・施設の流れ
9. 高齢者住宅・施設の種類と機能
10. 障害者向け住宅および施設の種類と機能
11. 福祉住環境のコーディネートの実際
後半の記述式試験では、課題に対する提案力などの実務能力、応用力、総合的判断力を問う問題が出題されます。
福祉住環境コーディネーターが活躍できる場とは?
福祉住環境コーディネーターとしての活躍できる場は数多くあります。介護・福祉業界であれば、在宅介護を支援する居宅介護支援事業所、福祉用具を販売・貸与する事業所などが、建築業界であれば、住宅のリフォームや設計する建築事務所、施工する工務店やハウスメーカーなどです。病院やリハビリテーションセンターなどでも、その知識は活用できます。自宅復帰する利用者からの相談が多いからです。
実際、福祉住環境コーディネーターの検定試験の受験者は、福祉用具専門相談員や介護福祉士、介護職員初任者研修、理学療法士、介護支援相談員(ケアマネジャー)など介護・福祉系の資格を持っている人が少なくありません。また、建築系でも宅地建物取引士や建築士などが受験しています。これは、介護・福祉と建築、双方の専門知識を身につけることで、仕事の幅が広がるからです。
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がい者が安心して生活できる住環境を提案
核家族化が進み、一人暮らし、もしくは夫婦だけの二人暮らしをする高齢者は年々増加しています。住み慣れた自宅で余生を過ごしたいと思っていても、高齢者のみが生活する家庭は家の中での事故が発生する確率が高まります。高齢者や障がい者が安心して生活していくためにも、福祉住環境コーディネーターはこれまで以上に求められるようになるでしょう。
現在は介護・福祉や建築関連の仕事に従事されている方が仕事の幅を広げるために受験しているようですが、今後は住環境コーディネーターとして独立して働く方も増えるかもしれません。すべての人が安心して暮らせる住環境をと考えている方はぜひ、受験を検討されてみてはいかがでしょうか。
介護現場で役立つ資格・研修の種類まとめ!取得方法やメリット・難易度についても解説
https://gooschool.jp/magazine/g018/c0321/contents-859/団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本が超高齢化社会になる「2025年問題」。そんな超高齢化社会を目前に、介護サービスへのニーズの高まりも手伝って、介護業界へチャレンジする方、すでに介護業界で活躍されていてスキルアップ・キャリアップをお考えの方をはじめ、ご家族に介護が必要になったときのために正しい知識を身につけておきたいなどの理由から、介護資格の取得を検討する方が増えてきています。この記事では介護資格・研修の種類や取得メリット、資格試験があるものは難易度や合格率もあわせて紹介します。
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