社会保障制度における障害者福祉とはどういうもの?
社会保障制度とは、病気やケガ、老齢、失業、貧困などにより日常生活の安定が損なわれた際、国や地方公共団体が一定水準の保障を行う制度のことです。この社会保障制度は、「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「保健医療・公衆衛生」の4つから構成されています。障害者福祉や障害児支援は「社会福祉」に含まれます。
その障害者福祉とは、年齢にかかわらず、身体・知的発達・精神に障害を持つ人が安心して暮らしていけるよう、自立を支援する障害福祉サービスのことです。これは、介護給付や相談支援、訓練等給付、自立支援医療、補装具などの「自立支援給付」と、地域活動支援センターや成年後見制度利用支援、自発的活動支援などの「地域生活支援事業」に分かれています。
なお、障害児支援は障害者福祉の領域ではなく、児童福祉の領域になります。児童福祉とは子どもを対象にした福祉サービスのことで、障害児への支援だけでなく、子育て支援やひとり親家庭、児童虐待など子どもを生み育てやすい社会環境の整備を目的としたサービスです。このように、障害児支援は厳密には児童福祉の領域ですが、ここでは障害児支援も含めて説明します。
自立支援給付にはどのようなものがあるの?
障害児・者個々に支給される自立支援給付は、大きく「介護給付」と「訓練等給付」に分かれています。介護給付は居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所(ショートステイ)、療養介護、生活介護、施設入所支援といった介護支援サービスのこと、訓練等給付は自立生活援助、共同生活援助(グループホーム)、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援(A型、B型)、就労定着支援といった訓練支援サービスのことです。これら障害福祉サービスは、対象者が厳密に区分されています。
ところで、よく言われることに、高齢者福祉と障害者福祉はどう違うのかというものがあります。いろいろとありますが、まずサービスの対象者が異なります。高齢者福祉では65歳以上の高齢者に限定されていますが、障害者福祉は児童、少年、青年、中高年と幅広い年齢層が対象となります。また、高齢者福祉では介護サービスが中心となりますが、障害者福祉では介護サービスだけでなく、1人で生きていくための機能訓練や生活訓練、就職支援なども含まれています。
障害児・者を支援する福祉職にはどういったものがあるか?
それでは、障害児・者を支援するお仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは主な福祉職をご紹介します。
■生活支援員
個別支援計画にもとづき、生活介護や自立訓練、就労支援を提供します。具体的には、食事や排せつ、入浴、更衣の介助、創作活動や生産活動の支援、対人関係や将来についての相談援助、身体機能を向上させたり、社会生活を送るうえで必要となる自立訓練、求職活動や就労維持の支援など、利用者が自立した日常生活・社会生活を送るためのサービスです。主な就職先は障害者支援施設や地域活動支援センターなどですが、実際の業務内容は障害者支援施設によって異なります。生活支援員になるために必要な資格はありませんが、介護福祉の知識とスキルは求められます。
■障害児・者居宅介護従業者(ホームヘルパー)
利用者宅での食事や排せつ、入浴、更衣の介助などの身体介護、掃除や調理、洗濯などの家事援助、通院や受診手続きなどを介助する乗降介助、外出時での同行援護や行動援護など、利用者の自立した日常生活・社会生活を支援します。主な就職先は、障害福祉サービス事業所や社会福祉協議会などです。居宅介護従業者になるには、介護福祉士の資格あるいは実務者研修や居宅介護職員初任者研修、介護職員初任者研修の修了など、各サービスに規定された要件を満たす必要があります。
■相談支援専門員
障害者総合支援法にもとづいた専門職です。個別支援計画の作成、施設や病院から退所・退院後における地域生活への移行や定着支援など、障害児・者が自立した生活を送れるよう全般的な相談支援を提供します。主な就職先は、相談支援事業所や相談支援センターなどです。
■サービス管理責任者
障害者総合支援法にもとづき、生活介護、療養介護、自立訓練(機能訓練、生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助を提供する事業所に配置が義務付けられている専門職です。個別支援計画の作成とモニタリング、関係機関との連携調整、人材育成や管理業務などの役割を担います。主な就職先は障害者支援施設や地域活動支援センターなどです。サービス管理責任者になるには、相談支援従事者初任者研修とサービス管理責任者等研修の修了、一定の実務経験など規定された要件を満たす必要があります。
■サービス提供責任者
障害者総合支援法にもとづき、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援など訪問系サービスを提供する事業所に配置が義務付けられている専門職です。個別支援計画の作成とモニタリング、関係機関との連携調整、人材育成や管理業務などの役割を担います。主な就職先は、障害福祉サービス事業所や社会福祉協議会などです。サービス提供責任者になるには、介護福祉士の資格あるいは実務者研修や居宅介護職員初任者研修、介護職員初任者研修の修了など、各サービスに規定された要件を満たす必要があります。
■職業指導員/就労支援員
就労移行支援や就労継続支援など、働くために必要な知識・技術を習得するための指導や訓練、就労や就職後の定着支援などを行います。職業指導員は就労移行支援と就労継続支援を、就労支援員は就労移行支援が行えます。主な就職先は、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所(A型、B型)、障害児入所施設(福祉型、医療型)などです。職業指導員や就労支援員になるために必要な資格はありません。
■児童指導員
知的障害児や身体障害児など、家族による療育・養育が困難な児童を養護します。生活指導計画書の作成、家庭的な援助、学校などの関係機関との連絡・調整、保護者との面談など生活環境を整備し、生活指導を行います。主な就職先は、障害児入所施設(福祉型、医療型)、児童発達支援センター(福祉型、医療型)などの児童福祉施設です。児童指導員になるには、児童指導員任用資格が必要です。
障害児・者を支援するうえで取得しておきたい資格とは?
障害児・者を支援する仕事は、相談支援専門員やサービス管理責任者のように資格が必要な職種もあれば、生活支援員や職業指導員のように無資格でも可能な職種もあります。ただ、福祉業界でキャリアアップを目指すならば資格取得は必須です。ここでは、就職に有利となる7つの介護福祉系の資格をご紹介します。
●社会福祉主事任用資格:社会福祉主事になるために必要な資格です。資格を取得するには、(1)大学等で社会福祉に関する科目を3科目以上単位修得する、(2)指定の通信教育課程を修了する、(3)指定の養成機関を修了する、(4)都道府県の講習会を受講する、(5)社会福祉士・精神保健福祉士の資格を保有している、これらのいずれかの要件を満たす必要があります。
●児童指導員任用資格:児童指導員として働くための資格です。取得するには、(1)大学で社会福祉学、心理学、教育学、社会学を専修する学科を卒業する、(2)幼稚園・小学校・中学校・高校の教員免許を保有している、(3)社会福祉士・精神保健福祉士の資格を保有している、(4)児童福祉施設で2年以上の実務経験がある、これらのいずれかの要件を満たす必要があります。
●介護職員初任者研修:介護職をするうえで基礎となる資格です。修了するには、130時間の講習の受講と修了試験での合格が必要です。
●介護福祉士実務者研修:介護職員初任者研修に次ぐ資格です。修了するには、450時間の講習が必要です。なお、次のステップの介護福祉士国家試験を受験するには、介護福祉士実務者研修を修了している必要があります。
●介護福祉士:法にもとづく国家資格です。資格を取得するには、介護福祉士国家試験に合格する必要があります。受験資格のルートの1つは、介護福祉士実務者研修を修了し、3年間介護等の実務経験を積むことです。
●社会福祉士:法にもとづく国家資格です。資格を取得するには、社会福祉士国家試験に合格する必要があります。受験資格のルートの1つは、児童指導員やサービス管理責任者などで4年間の相談援助実務を積むことです。
●精神保健福祉士:法にもとづく国家資格です。資格を取得するには、精神保健福祉士国家試験に合格する必要があります。受験資格のルートの1つは、児童指導員や生活支援員、職業指導員などで4年間の相談援助実務を積むことです。
障害児・者にかかわる福祉の仕事は無資格でできるものもありますが、多くは資格を必要とします。たとえ資格は不要であっても、障害児・者福祉に対する専門知識とスキルは求められますので、キャリアプランを考えながら資格取得を目指してはいかがでしょうか。
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