弁護士・裁判官・検察官(法曹三者)になるために必要不可欠な司法試験。
司法試験を受験するにあたって、独学での勉強から受験をしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
ここでは、独学で司法試験の受験を考えている方のために、司法試験は独学で合格できるのか?独学での試験対策は何から始めたらよいのかなどを説明していきます。
また独学にあたって予備試験の知識、おすすめの参考書やテキスト、必要な勉強時間や実際に独学で司法試験を合格した人のブログなど情報を盛り沢山にしっかりと紹介いたします。
こちらを参考にしていただき、受験に対するモチベーションを上げていきましょう。
司法試験の勉強は、予備校や通信教育を利用するのもおすすめです。
詳しくは、こちらの記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。
司法試験とは
司法試験とは弁護士・裁判官・検察官(法曹三者)になろうとする者に必要な学識、応用能力が備わっているかを判断する国家試験です。
司法試験に合格すると、司法修習を1年にわたって受け、司法修習生考試と呼ばれる試験に合格すると、法曹三者になる資格が与えられますよ。
また、法曹三者の他にも税理士や司法書士、行政書士などさまざまな職種で活躍できるので、自分の人生の可能性を広げられる資格といってもよいでしょう。
次から司法試験の詳しい概要について説明していきますね。
司法試験の試験概要
司法試験の試験概要(受験資格・試験日程・試験範囲・合格率と難易度)について説明していきます。
司法試験の受験資格
司法試験を受験するためには、2つのルートから受験資格を得る必要があります。
1つ目は「法科大学院を修了する」ことです。
法科大学院は4年制大学卒業後、履修者は2年、未修者は3年で修了できます。
2つ目は「予備試験を合格する」ことです。
予備試験では、短答式試験・論文式試験・口述式試験の3つの試験を順番に合格していくことが条件になっています。
法科大学院の修了、予備試験の合格どちらかのルートで受験資格を得ると、5年間5回まで司法試験を受験できます。
司法試験の試験日程
次に司法試験の試験日程について、法務省HPを参考に表にまとめました。
7月10日(水) | 論文式試験 | 選択科目(3時間) 公法系科目第1問(2時間) 公法系科目第2問(2時間) |
7月11日(木) | 民事系科目第1問(2時間) 民事系科目第2問(2時間) 民事系科目第3問(2時間) |
|
7月13日(土) | 刑事系科目第1問(2時間) 刑事系科目第2問(2時間) |
|
7月14日(日) | 短答式試験 | 憲法(60分) 民法(75分) 刑法(60分) |
(参考:法務省HP)
司法試験は全4日間で実地されており、論文式試験は最初の3日間で公法系科目第1~2問、民事系科目第1~3問、刑事系科目第1~2問を4~6時間で行われます。
公法系科目は「憲法及び行政法に関する分野の科目」、民事系科目は「民法、商法及び民事訴訟法に関する分野の科目」、刑事系科目は「刑法及び刑事訴訟法に関する分野の科目」とされています。
論文式試験が終わり、4日目では短答式試験を憲法(60分)、民法(75分)、刑法(60分)の計3時間15分で行われますよ。
司法試験の試験範囲
司法試験の試験範囲について、より詳しく表にまとめました。
予備試験短答 | 予備試験論文 | 司法試験短答 | 司法試験論文 | |
憲法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
行政法 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
民法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
商法 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
民事訴訟法 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
刑法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
刑事訴訟法 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
一般教養科目 | 〇 | × | × | × |
法律実務基礎科目 | × | 〇 | × | × |
選択科目 | × | 〇 | × | 〇 |
(参考:アガルート公式HP)
司法試験短答式では憲法、民法、刑法(上三法)の3科目を択一式形式で出題されます。
論文式では法律基本7科目(憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法)と選択科目(倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法うち1つ選択)の記述式で出題されますよ。
短答式では科目が3つに対して、論文式では法律基本7科目に加えてさらに選択科目が加わります。
論文式試験は日数も3日間の長丁場試験であり、自分で回答を書く記述式の試験のため難易度も疲労度も高い試験だといえるでしょう。
司法試験の合格率、難易度
司法試験の難易度は実際どれくらいなのか、過去5年の合格率を表にしたので表を踏まえて説明していきますね。
年度 | 合格率 |
令和元年 | 33.6% |
令和2年 | 39.2% |
令和3年 | 41.5% |
令和4年 | 45.5% |
令和5年 | 45.3% |
(参考:法務省HP)
司法試験の合格率を平成28年から見てみると、平成28年から25.9%、29.1%、33.6%、39.2%、41.5%と年々上がってきているのが分かりますね。
合格率だけで見ると、難易度はそれほど高くないのでは?と思う方もいるかもしれませんが、司法試験は第一に受験資格を得らなければならないということを忘れてはいけません。
司法試験の受験資格は法科大学院の修了もしくは予備試験の合格者であり、4年制大学~法科大学院の短くても6年かけた方と、合格率は例年4%ほどしかない予備試験の合格者の方でも、司法試験の合格率は半数もいっていないということになります。
そのように考えると、最終的に出た司法試験の合格率以上に難易度の高い試験だということが分かるのではないでしょうか。
司法試験独学は無理?
難易度の高い司法試験は独学で合格できるのでしょうか?
いくつかの資格・通信講座を調べた結果、多くの通信講座が独学では厳しいといっていることが分かりました。
なぜ司法試験は独学では厳しいといわれているのか、理由を3つ挙げたのでそれぞれ説明していきますね。
法律の専門用語が難しい
1つ目は「法律の専門用語が難しい」ことです。
独学で勉強を始める場合、法律の勉強に初めて触れる方が多いですね。
始めの勉強として、入門書や基本書から法律の知識を学ぼうとしますが、法律の用語は言い回しが難しく、1回読んだだけでは理解が難しいものが多いです。
法律の用語集(入門書や基本書)は丁寧な説明はされているものの、法律の専門用語が羅列されているため初学者では専門用語、法律の意味を理解することでさえ時間が掛かってしまうでしょう。
また、予備校などから出版されている基本書も通常の基本書に比べて分かりやすくはなっていますが、難解な法律用語が羅列されていることに変わりはありません。
モチベーションを保ちにくい
2つ目は「モチベーションが保ちにくい」ことです。
入門書や基本書での法律の専門用語の多さや試験科目の多さ、論文式試験の対策の難しさなど、法律初学者にとっては何から勉強したらよいのか分からなくなり、モチベーションがどんどん下がっていく受験生が多いです。
改善策が分からないままモチベーションが下がり、勉強もどの配分で進めたらよいかも悩み始め、結果迷いの連鎖が生じていきますね。
そのまま受験を諦めてしまうケースも多いのですが、受験を諦めたくない場合は入門書からもう一度やり直すか、同じ受験生の仲間をSNSなどで探し、情報を共有してモチベーションを立ち直すかなど改善策を探しましょう。
論文式試験に対応した勉強ができない
3つ目は「論文式試験に対応した勉強ができない」ことです。
論文式試験には正解がありません。
正解がないというのも、判例にもさまざまな読み方があり、学者によっては批判的な意見も出ることがあるため一概に正解とは言い切れないことがあります。
裁判所の判例が出されていた事例と似た問題が出題されることもありますが、出題者は巧妙に問題をずらして出題しているため、そのまま覚えていた判例を解答しても正解にならないケースもありますよ。
ですので論文式試験はただ知識を覚えればよいのではなく、さまざまな観点から事例をみて、自分の言葉で人に伝わる判例を解答できるかが肝になります。
司法試験に独学で合格した人はいるのか
司法試験を独学で受験するのは難しい理由を説明しましたが、実際に独学で合格した方はいるのでしょうか。
平成28年から令和3年までの受験者数、合格者、合格率を表にまとめました。
平成28年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 10,442人 | 5,950人 | 4,492人 |
合格者数 | 405人 | 74人 | 331人 |
合格率 | 3.88% | 1.24% | 7.37% |
平成29年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 10,743人 | 6,331人 | 4,412人 |
合格者数 | 444人 | 123人 | 321人 |
合格率 | 4.13% | 1.94% | 7.28% |
平成30年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 11,136人 | 6,671人 | 4,465人 |
合格者数 | 433人 | 115人 | 318人 |
合格率 | 3.89% | 1.72% | 7.12% |
令和元年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 11,780人 | 7,175人 | 4,605人 |
合格者数 | 476人 | 111人 | 365人 |
合格率 | 4.04% | 1.55% | 7.93% |
令和2年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 10,608人 | 6,403人 | 4,205人 |
合格者数 | 442人 | 104人 | 338人 |
合格率 | 4.17% | 1.62% | 8.04% |
令和3年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 11,717 | 7,151 | 4,566 |
合格者数 | 467 | 116 | 351 |
合格率 | 3.99% | 1.62% | 7.69% |
(参考:アガルート公式HP)
ここでは、法科大学院生・大学生以外を独学で受験した方と定義して表をみていきます。
法科大学院生・大学生以外の平成28年からの合格率を見てみると、平成28年1.24%、平成29年は1.94%、平成30年1.72%、令和元年1.55%、令和2年1.62%、令和3年1.62%とどの年度も2%以下なことが分かりますね。
完全独学でなく、予備校や通信講座の利用があった方もこの合格率には含まれているので、実際の独学での合格者はもっと少ないということになります。
平成28年~令和3年の合格率だけでも2%を下回っていることから、独学で司法試験を合格した方はいますが、完全独学で司法試験を合格することはとても難易度が高いといえるでしょう。
司法試験独学での合格した人や合格体験記
司法試験に独学で合格した人はどんな方で、どんな勉強方法をしていたのでしょうか。
いくつかの体験談やブログを探してみたところ、「PRESIDENT Online」というサイトに掲載されている独学で司法試験に合格した岡野武志さんの記事を見つけました。
岡野さんは高校卒業後、10年間のフリーター生活を経て28歳で司法試験に独学で合格していますよ。
岡野さんは司法試験合格という目標に達成するために、スタートからゴールに向かって実力を積み上げていく「積み上げ式」とゴールから逆算して必要な課題を見つけ出し課題を必要限度クリアしていく「逆算式」の2つのルートで勉強していました。
・目標を正確に把握する ・現状を正確に把握する ・目標にたどり着くまでの課題を抽出する ・項目ごとに細分化して取り組みやすくする |
上記は失敗を繰り返しながら得た岡野さんの逆算ノウハウです。
最初は参考書をひたすら読み、知識を詰め込もうと考えていた岡野さんでしたが、まったく歯が立たず、過去問を何十年分も解いて研究し、演習問題を集中的に取り組みました。
その結果、岡野さんは司法試験5回目のチャレンジでようやく合格を果たしていますよ。
司法試験を独学で行うメリット
司法試験を独学で行うメリットを紹介します。
司法試験を独学で行うメリット |
・費用を抑えられる ・自分のペースで勉強できる |
メリットを2つ挙げたので、それぞれ説明していきますね。
費用を抑えられる
1つ目は「費用を抑えられる」ことです。
独学ではかかる費用は勉強するための参考書やテキストのみになり、大幅に費用を抑えられます。
例えば、国立法科大学院の場合、学費は入学金28万円、授業料80万円ほどになっており、総額108万円の費用を抑えていますね。
独学の場合、テキストや参考書にかかる費用は1冊1,500~4,000円ほど、科目ごとに数が必要になるため、テキストや参考書を多く買えばその分費用はかさみますが、学費に比べればかなり低コストになります。
ですので金銭的費用を抑えながら、司法試験を受験したいと考えている方には独学はメリットの1つといえるでしょう。
自分のペースで勉強できる
2つ目は「自分のペースで勉強できる」ことです。
法科大学院や予備校などの場合、決められたカリキュラムに合わせて時間を確保する必要がありますが、独学の場合、自分の生活スタイルに合わせて勉強時間を確保できます。
勉強配分も自分で決められるので、伸ばしたい科目に力を入れる日や論文式対策に集中する日など、柔軟に対応していけますね。
また、社会人や主婦などのまとまった勉強時間の確保が難しい方でも、平日は2~3時間、休日で6~7時間長めに勉強時間を取るという方法もできるので、自分の生活スタイルと勉強を並行して進めたい方には独学はメリットになるでしょう。
司法試験を独学で行うデメリット
司法試験を独学で行うデメリットについても紹介します。
司法試験を独学で行うデメリット |
・モチベーションを保ちにくい ・勉強の方向性を誤りやすい ・情報収集が難しい |
デメリットを3つ挙げたのでそれぞれ説明していきますね。
モチベーションを保ちにくい
1つ目は「モチベーションを保ちにくい」ことです。
独学だと完全1人での勉強になるため、モチベーションの維持が難しいです。
周りに司法試験受験者がいない場合、勉強に対するモチベーション管理は全て自分で行わなければいけませんね。
司法試験の勉強期間は、年単位の勉強が基本とされており、その中でずっと1人で勉強を持続していくのはかなり無理があります。
また、勉強途中で分からないところが出てきても、すぐに解決できず、勉強時間の効率が悪くなるとともにモチベーションもどんどん下がっていくでしょう。
勉強の方向性を誤りやすい
2つ目は「勉強の方向性を誤りやすい」ことです。
独学ではまず、法律の基本から学ぶことから始めますが、法律の専門用語は量が多く理解するのにも時間がかかります。
知識をまずしっかり覚えることも大切ですが、司法試験は科目数も多く、記述式の論文式試験もありますね。
膨大な科目数の勉強配分を自分で決めなければならないことから、知らず知らずのうちに方向性が定まらず、結果的に効率が悪くなることもあります。
また論文式試験は、事例に対して自身の言葉で解答を述べなければいけないため、第三者に客観的に解答を見てもらわないと、直すところにも気づけない恐れがあるでしょう。
情報収集が難しい
3つ目は「情報収集が難しい」ことです。
独学では、法科大学院生や予備校に通っている方に比べて情報が入りにくい点があります。
法科大学院や予備校などでは、司法試験についての詳しい情報、最新情報が入ってくるためおのずと情報を手に入れられますが、独学者は全て自分で情報を得なければいけませんね。
過去の司法試験の動向なども、予備校などに比べ曖昧な情報となり、自分だけで司法試験の情報収集を行っていくのは限りがあるのが現実です。
司法試験を独学で行うメリット・デメリットまとめ
紹介した独学でのメリット・デメリットを表にまとめました。
メリット | デメリット |
・費用を抑えられる ・自分のペースで勉強できる |
・モチベーションを保ちにくい ・勉強の方向性を誤りやすい ・情報収集が難しい |
司法試験を独学で行うと、法科大学院などの学費に比べて費用を抑えられ、勉強時間も自分の生活スタイルに合わせて確保できるので、金銭的負担を抑えたい、まとまった勉強時間の確保が難しい方には独学はおすすめできますよ。
しかし、司法試験の勉強を独学で行うことによって、モチベーションを保ちにくく、完全1人での勉強になるため勉強方向が定まらず、知らず知らずのうちに誤った方向で勉強を進めてしまう恐れもあります。
また、法科大学院生や予備校生に比べ、司法試験に対する情報は入りにくく、自分で情報収集をするのにも限りがあるデメリットもあります。
以上のメリット・デメリットそれぞれの特徴を踏まえたうえで、自分が独学で勉強を行っていけるかをよく考えてみて下さいね。
司法試験の試験対策におすすめの参考書・テキスト
司法試験の試験対策におすすめな入門書、参考書や判例集などをおすすめポイントを踏まえて紹介していきます。
六法
司法試験において条文は重要になり、条文が記載されている六法(法令集)は必要不可欠になります。
六法にはポケット六法、デイリー六法、判例六法、六法全書、模範六法、紙媒体か電子媒体などさまざまな種類がありますが、購入するのは紙媒体の判例付きと判例付きでないもの(ポケット六法)1つずつの購入がおすすめですよ。
司法試験で受験生に配布される法文も紙媒体になるので、紙媒体の六法に慣れておけるということでもおすすめですし、小さめのポケット六法なら持ち運べるサイズなので隙間時間の勉強も可能になります。
そして、判例付きの六法は直接書き込みができ、判例の記載があるため書き込む情報もも少なく、集約しやすいです。
判例なしの六法は、論文式試験の勉強の際にも活用できますし、司法試験本番での法文は判例の記載がないため、本番にも参照可能です。
入門書
入門書は初めて法律の勉強をする人におすすめです。
基本書より説明が分かりやすくなっているため、独学での勉強は入門書を読んでから勉強に入る方が、法律の体系や法律の理解もできるのでおすすめですよ。
おすすめは「有斐閣ストゥディアシリーズ」です。
有斐閣ストゥディアでは、法律が自分たちの生活にどう関わっているのかを具体的に事例や図表を用いて解説しているので、法律の基礎を学ぶには適している一冊です。
行政から民法、民事訴訟法などさまざまなシリーズを出版しているので、抑えたい科目ごとの購入がおすすめですよ。
基本書
基本書は法律の学者が書いた専門書になります。
入門書と比べて説明の記述は難しくなっていますが、学者の法律の研究の結果を記したものなので、法律の全体像を理解するには適している教材ですよ。
また、勉強するときに特定のポイントをすぐに確認できる辞書としても活用できます。
おすすめは「基本〇〇シリーズ」です。
基本シリーズは多くの受験生から圧倒的な支持を得ています。
各分野、章ごとに設問があり、設問を理解すると法律の体系と解き方を学習でき、判例・通説解説されているため初めての方にも勉強しやすい一冊です。
科目ごとにシリーズが出ており、刑法の場合I(総論)とⅡ(各論)二冊続きになっているので、知識をより深めたい方に両方持っておくのもおすすめですよ。
参考書
参考書は司法試験の予備校が司法試験対策として作成した教材になります。
特に用意すべきは論証集で、論点についての答案が教材に直接書き込めるようになっているため、論証集の使い方次第で有効的な勉強ができますよ。
おすすめは「アガルートの司法試験・予備試験 合格論集」です。
工藤北斗講師を始めとする有名講師の方々が膨大な数の基本書・判例解説・学術論文を調べ上げ、作成した一冊になっています。
各論集ごとに出典が記載されており、勉強中に気になった点はすぐ確認できるため、効率よく勉強を進められます。
また、本来予備校の参考書は予備校内でしか購入ができないのですが、「アガルートの司法試験・予備試験 合格論集」は予備校の中で唯一販売している参考書なので一冊持っておくのもよいでしょう。
判例集
判例集は重要な判例についての事案・概要について法律の専門家が解説している本になります。
予備校などのテキストに比べて、細かい記述で判例が引用されていますが、細かすぎて初めて法律を学ぶ人には理解が難しいことも多いです。
基本書などに記載されている判例をある程度理解した後に、より判例の理解を深めるために利用するのがよいでしょう。
おすすめは「判例百選」です。
「判例百選」は有斐閣から出版されており、各科目の重要な判例、先例的意義の高い裁判例が100程度掲載されていますよ。
また、事例の概要(紛争の生じた状況)、判旨(裁判所の実際の判断)、解説(学者、実務家による判例への解説)の3つで構成されています。
数多くある判例集の中でも「判例百選」は最も受験生に活用されているシリーズなので、どの判例集を購入したらよいか迷っている方にもおすすめすよ。
演習書
演習書は学者が具体的な設例に対して解説している教材になります。
演習書は、入門書や基本書でインプットした知識をアウトプットするときに役立ちます。
しかし、内容が正確で問題の深い内容も理解できますが、解答例が記載されている演習書は少ないため、注意が必要ですよ。
参考書などで解答の流れを理解してから、演習書を使うのがおすすめの活用法です。
演習書のおすすめは「Law practice」シリーズです。
「Law practice」シリーズは、事例問題を用いて各科目の基本論点が出てくる事例問題、解説があるため、各科目の基本論点についての理解・事例においての処理も学べる一冊ですよ。
そして網羅性が高く、章ごとの論点についての事例・解説があるため、範囲が膨大な司法試験対策には活用できる一冊でしょう。
司法試験独学での試験対策(シケタイ)
独学での司法試験の試験対策について、どんなものがあるのか紹介します。
司法試験に必要とされている勉強時間、勉強スケジュール、通信講座の利用についても説明していきますね。
司法試験独学で必要な勉強時間
独学での司法試験勉強に必要とされている平均勉強時間について、表にまとめました。
資格・通信講座 | 平均勉強時間 |
アガルート | 3,000~8,000時間 |
スタディング | 3,000~10,000時間 |
資格スクエア | 9000時間 |
(各資格・通信講座より独自作成)
各通信講座から、司法試験の平均勉強時間を調べた結果、勉強時間は3,000~10,000時間が平均的ということが分かりました。
3,000~10,000時間というのは、1日8.5時間を1年間続けようやく3,000時間に達し、3年半続けてやっと10,000時間に達するほどです。
しかし、現実1日8.5時間を毎日続けることは、到底無理がありますね。
司法試験の勉強時間は、法科大学院生が在学中から勉強をする期間を基本として考えられているため年単位の勉強は必要とされています。
司法試験独学での勉強スケジュール
司法試験を独学かつ最短で受験、合格するためには、まず受験資格である「予備試験の合格」が必要不可欠です。
予備試験は受験資格がなく、短答式試験・論文式試験・口述式試験の3つの試験を順番に合格できれば、無事司法試験の受験資格を得られます。
そして、予備試験の合格発表は例年11月なため、合格すれば翌年5月の司法試験に受験でき、半年間で司法試験までの勉強を抑えることが、独学で最短のルートになります。
司法試験の勉強では、まず知識のインプットから始め、法律基本7科目のうち憲法・民法・刑法の上3法は法律において特に重要になるため、より丁寧にインプット学習していきましょう。
しかしいつまでも丁寧にインプットしていては、答案を実際に書いていく勉強がおろそかになっていくため、浅く広くインプットを一通り終わらせ、アウトプット(知識を応用していく)勉強に入ります。
論文式試験では、実際に法律答案を自分で書いて解答する試験になるため、何度も過去問を活用して法律答案の形を頭に染み付けていきましょう。
そして独学で合格を目指すとなれば、〇年後の司法試験で受かるという目標をもって勉強するのもおすすめです。
例えば4年後の司法試験に合格するという目標を決めたとすれば、1年でインプットを終わらせ、次の1年ではアウトプットを重点的に、そして3年目で予備試験を受験し、翌年の司法試験を受験する、という計画を立てられます。
独学の場合、勉強スケジュールの組み立ても全て自分で管理することになりますが、無茶な勉強計画は身体を壊し、結果的に勉強の効率を妨げるものになるので、自分の生活に無理なく確保していけるスケジュールを組みましょう。
通信講座を利用する
独学での勉強にプラスして通信講座の利用もおすすめですよ。
司法試験に特化した通信講座のアガルートの司法試験入門講座・基礎講座「総合講義300」では、アガルート講師の方が入門書や基本書でわかりにくい法律の説明をかみ砕いて説明してくれます。
法律の知識への理解が早くなればなるほど、勉強の効率も上がっていきます。
また、過去の司法試験から出題傾向の高い論文式試験の問題をピックアップして、どの法律の知識が必要なのかも教えてくれますよ。
試験で問われた問題に対して、どう対処すればよいのかも教えてくれるため、自然と論文式試験に必要な思考力が身についていきます。
アガルートでは、司法試験の他にも、予備試験1年合格カリキュラムや短答式試験重要トピック攻略講座などサポートが充実しているので、ぜひ独学勉強のプラスに検討してみて下さい。
予備試験を1年で合格する為のスケジュール
司法試験を最短で合格するためには、予備試験を最短で合格する必要がありますね。
最短合格するためにまず予備試験の試験概要を説明してからおすすめの勉強方法、スケジュールを説明していきます。
予備試験の試験概要
予備試験の試験概要を表にまとめました。
試験 | 日程 |
短答式試験 | 令和6年7月14日 |
論文式試験 | 令和6年9月7日、8日 |
口述式試験 | 令和7年1月25日、26日 |
予備試験は3つの試験に分かれており、7月に短答式試験、9月に論文式試験、1月に口述式試験が実地されます。
そして短答式試験を合格すると、論文式試験を受験でき、論文式試験を合格すると口述式試験を受験できるという、段階式の選抜方式を取っていますよ。
予備試験に必要な勉強時間
予備試験に必要とされる勉強時間を、いくつかの通信講座を参考に表にまとめました。
資格・通信講座 | 平均勉強時間 |
アガルート | 3,000~10,000時間 |
スタディング | 3,000~8,000時間 |
資格スクエア | 2,500~3,000時間 |
(各資格・通信講座の情報をもとに独自作成)
アガルート・スタディング・資格スクエアが出している予備試験の平均勉強時間は、2,500~10,000時間でした。
司法試験の平均勉強時間を説明する際にも例としてあげましたが、1日8.5時間の勉強を3年半継続すると、10,000時間に到達できます。
しかし、1日8.5時間を3年半継続することは現実的ではないため、アガルートは予備試験の勉強期間も年単位を基本として考えていることが分かりますね。
一番少ない2,500~3,000時間であると、1日8.5時間であれば1年で到達しますが、こちらも毎日の継続は厳しいです。
毎日の勉強時間を3時間確保したと仮定すると、およそ2年半ほどで2,500~3,000時間には到達しますね。
ですので予備試験の勉強時間は、2年以上の期間を費やしながら勉強している方が多いということになるでしょう。
予備試験におすすめの勉強方法・スケジュール
予備試験を1年で合格するためのおすすめの勉強方法、勉強スケジュールを紹介しますね。
・導入期 ・基礎養成期 ・実力錬成期 ・直前対策期 |
上記の4つの期間(勉強スケジュール)に分けて、おすすめの勉強方法を説明していきます。
導入期
「導入期」とは、法律の全体像を学び、今後の勉強計画を立てる期間になります。
まずは無理のない範囲で、自分が1週間でどれくらいの勉強時間を確保できるのかしっかりと把握しましょう。
最初に法律基本科目の中でも重要とされている憲法・民法・刑法(上3法)の勉強の開始します。
この時注意するのは、手あたり次第に手を付けると情報が混乱して上手く頭にインプットしていかないため、科目ごとに勉強していきましょう。
勉強の順番としては、
・説明が分かりやすい入門書で法律の全体像を把握する。 ・把握してきたら基本書・判例集でより理解を深めていく。 ・基本書・判例集を読みながら、短答式の演習、論文式の問題や答案例のチェック を順番に行い、知識がインプットされているかを確認していく。 |
上記の順番で行うと、ただひたすらインプットするだけでなく、短答式の演習、論文式の問題をチェックしている際に自分がインプットできているかを確認できるので、効率良く勉強していけるでしょう。
憲法・民法・刑法が一通り終わったら、次の科目(民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法)に手を付けていきましょう。
基礎養成期
「基礎養成期」では、導入期で行った勉強から少しスピード感を意識した勉強期間にしていきましょう。
スピードを上げていくというのは、勉強配分のアウトプットの勉強比率を増やしていく、論文の答案を実際に書いてみるなどです。
まずは分からなくても解いてみて、自身が解答した答案と解答例を比較しましょう。
比例する箇所は、略語・略文字の使用、条文を正確に書いているか、問題の所在を把握しているか、論点落とし、規範定立が正確か、全体の倫理に矛盾はないか、などを比較し、答案例に近い答案が書けるようになるまで何度も繰り返します。
繰り返しの勉強を7科目全て年内に終わるよう、計画を立てていきましょう。
実力錬成期
「実力錬成期」では、論文対策を中心に、インプットした知識の応用を学んでいく期間です。
内容としては、論文式の過去問などで答案をひたすら書き、知識や考え方のアウトプット方法を確立させていきます。
分からないところがあっても大丈夫なので、立ち止まらず答案を沢山解いていきましょう。
短答式が始まる2ヶ月前(短答式は5月なので2月)までには実力錬成期の勉強にはいれるように進めていきましょう。
直前対策期
短答式試験2ヶ月前の「直前対策期」には、短答・論文・口述それぞれに特化した対策を始める期間になります。
特に短答式試験対策には力を入れましょう。
あれこれ詰め込んでも返って焦るので、自分が復習すべきところ(基本的な問題など)を総復習していきましょう。
しっかりと知識がインプットされていることを確認出来たら、短答式試験問題の処理の仕方なども確認して、短答式試験に挑みましょう。
司法試験独学についてよくある質問
司法試験独学について、よくある質問を表にまとめました。
司法試験独学についてよくある質問 |
・司法試験は独学で合格できる? ・司法試験独学での試験対策(シケタイ)は? ・予備試験を1年で合格した人のブログってあるの? ・司法試験の勉強はいつからしたらいい? ・司法試験独学の勉強は何からしたらいい? ・司法試験を独学で合格した人のブログってあるの? ・司法試験独学の勉強時間はどれくらい? ・司法試験って暗記ゲー?頑張れば合格できる? |
質問1つ1つ説明していくので、ぜひ参考にしてみて下さいね。
司法試験は独学で合格できる?
司法試験を独学で合格した方は実際にいましたが、年単位の勉強をしている方が大半です。
司法試験の大学院生・大学生以外の合格率は例年2%を下回っており、その中には予備講座、通信講座を利用した方も含まれての合格率になっています。
予備講座や通信講座を利用していた方でも、合格率が2%を下回っているということは、完全独学で合格した方はもっと少ないとみてよいでしょう。
そして独学で司法試験を受験するには、まず予備試験を合格しなければ、司法試験の受験資格は得られません。
予備試験も難易度は高く、例年の合格率は4%前後と低いため、独学で行う場合はしっかりとした勉強時間の確保、年単位で勉強を行っていく覚悟が必要です。
司法試験独学での試験対策(シケタイ)は?
司法試験では科目範囲が広く、法律を扱う試験であるため法律の専門用語を覚えるのにも、時間がかかるほどです。
法律基本7科目の中の憲法・民法・刑法(上3法)は、基本7科目の中でも重要な科目になるため、早めにインプットしていきましょう。
そして、司法試験の論文式試験では、出題された事例問題に対して自分でどの判例を出すのかを自分の言葉で書く試験になるため、インプットした法律の知識をどうアウトプットできるかが重要になります。
「何年の司法試験に受験する」という明確な目標を立てておくと、そのためにはいつまでにインプットを終わらせ、論文式試験対策に重点を置いた勉強を開始するかを、自分の中で意識しながら勉強できるようになるのでおすすめですよ。
予備試験を1年で合格した人のブログってあるの?
いくつかのサイトを調べた結果、Hatena Blogで「司法の犬」という方が予備試験を独学、1年で合格したことをブログに掲載していることが分かりました。
「司法の犬」さんは、非法学部生でありながらも独学かつ1年未満の勉強期間で、予備試験に合格しています。
ブログでは、参考にしてよかった勉強方法の本や、勉強方法の本の内容を意識した1日の勉強ルーティン、勉強時間や使用したテキストなどを記事を分けて、分かりやすく説明してくれていますよ。
勉強ルーティンでは、朝は図書館で論文式の勉強をし、テキストの目次を見ながらどの問題を解くか決めてから、決めた日の日付、その問題を解くのは何回目かを書き込んでいたようです。
前日などに解いたジャンルと近い問題はできるだけ解かないようにしたり、同じ問題は1~2ヶ月感覚を空けて解くようにしていたと、説明してくれています。
他のも解答する際に気を付けていたこと、気分転換の仕方も書いてくれているので、今後予備試験を独学で考えている方はぜひ参考にしてみて下さいね。
司法試験の勉強はいつからしたらいい?
司法試験の平均勉強時間は3,000~10,000時間になっており、年単位の勉強期間が基本になっています。
独学であると、まずは予備試験の勉強から始めるので、予備試験を踏まえると遅くても3~4年前には始めた方がよいでしょう。
予備試験、司法試験ともに科目範囲は膨大で、ただ覚えればよい訳ではなく、覚えた知識を応用できるまで勉強しなければいけません。
ですので、しっかりとした勉強期間・勉強時間を確保して挑むようにして下さいね。
司法試験独学での勉強は何からしたらいい?
独学の場合、法律について何も知らないことが多いので、まずは入門書から始め、法律の成り立ちから理解していきましょう。
入門書で法律の成り立ちを理解してきたら、基本書や判例所など各科目の教材を購入し、インプットをひたすら繰り返します。
科目数が多いため、少しずつ手を付けたくなりますが、我慢して科目ごとに知識を覚える、知識をより深めるといったことを繰り返していきます。
参考書や演習書も活用し、インプットした知識をアウトプットできるように、分からない問題があってもまずは解いてみる、解答例と比べて自分の解答はどこが足りていないかをチェック、また問題を解くをひたすら繰り返していきましょう。
司法試験を独学で合格した人のブログってあるの?
先ほど紹介した「司法の犬」さんは、予備試験合格後に司法試験も独学で合格しています。
そして、本記事内で紹介している岡野武志さんも、司法試験を独学で合格したことを「PRESIDENT Online」というサイトで書いています。
岡野さんは28歳で司法試験に独学で合格していますが、10年間のフリーター期間を経て、5回目の司法試験で合格していました。
岡野さんのブログでも、司法試験に合格するために行った逆算ノウハウや勉強方法などについても、説明してくれているので、ぜひ参考にして下さいね。
司法試験独学での勉強時間はどれくらい?
平均勉強時間は3,000~10,000時間ですが、この勉強時間は法科大学院ルートでの勉強時間、勉強期間が基本となっています。
独学であると法律の基礎から学び、司法試験の科目範囲の広さから勉強配分の組み立ても難しいため、もっと多くの勉強時間が必要なこともありますよ。
しかし、あくまで平均的な勉強時間であって、これだけ勉強すれば必ず合格できるといった保証のあるものではありません。
独学では、勉強時間から勉強配分、司法試験についての情報収集も1人で行うことになるため、精神的負担は大きくなります。
平均勉強時間を念頭に置きながらも、自分の生活スタイルに上手く勉強時間を確保していってくださいね。
司法試験って暗記ゲー?頑張れば受かる?
検索サイトで暗記ゲーなのかと問いている質問がいくつかあったため、調べてみました。
いくつかの通信講座や予備講座サイトで調べた結果、司法試験は暗記すればよいものではなく、暗記ゲーではないということが分かりました。
司法試験では、法律の基本的知識、分析能力、論点抽出能力などが問われ、ただ暗記するだけで突破できるほどの試験ではありません。
ですので、司法試験の受験を考えている方は、覚えた法律知識を応用し、司法試験の出題問題にしっかり解答できるまで、勉強を深めていきましょう。
まとめ
司法試験を独学で合格することは、不可能ではないですがかなり難易度の高いものになるでしょう。
司法試験を受験するために、まず予備試験を合格する必要があり、科目範囲も広いため法律の専門知識を覚えることでも時間がかかります。
また、独学での勉強は学費を抑え、自分の生活に合わせて勉強時間を確保できるメリットがありますが、勉強方法が分からなくなり、モチベーションがどんどん下がっていくデメリットもあります。
独学での司法試験勉強を、より効率よく行うために通信講座や予備校などの利用をプラスするのもおすすめですよ。
司法試験に特化した通信講座や予備校なら、分からないところもすぐ解決できたり、対策の難しい論文式試験にも第三者の意見を取り入れながら、実力をどんどん伸ばせます。
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